「星野先生に出会っていなかったらと思うと、背筋が冷える」
全教研での勉強を経て、僕は久留米大学附設中学に入学した。フセツと呼ばれるこの学校は、九州地区でも最上位の進学校だ。僕に似たような感じの勉強が驚くほどできる生徒が多く、エスカレーター式に上がる高校まで、本当に充実して過ごせた。
フセツに行かなければ東大受験も、後の起業もなかったかもしれない。星野先生にもし出会っていなかったらと思うと、少し背筋が冷える。僕は地元の八女市に残り、古い田舎のシステムに縛られ、いまのような満ち足りた人生ではなかったかもしれない。
全教研に行けた僕はある意味で、運が良かった。星野先生という存在と、親が月謝を払える経済力を持っていた。そのふたつだけでも、相当に恵まれていただろう。子どもを塾に通わせたいけれど、月数千円の月謝が払えない……という親は、いま決して少なくない。
受験で有利な勉強テクニックを身につける機会を、家の経済力で選り分けられてしまうのは、子どもにとっては不平等だ。すべての小学校にAIを用いた個別最適化学習を導入すれば、学習機会の不平等の大部分は解消されるのだけど、おそらく現状では無理だろう。
新任や年老いた先生の授業は、YouTubeに及ばない
けれど無料動画なら、個別最適化学習に近い環境を、子どもたちに与えられると思う。塾に通わせる代わりに、動画を学びに活用できる時代だ。
説明するまでもないが、YouTubeには教育系の学習動画が大量に公開されている。登録者数10万人以上になる人気YouTuberの教え方は、要点を押さえたコンパクトな説明で、するすると頭に入ってくる。単純に、話が上手い。教師になりたての新任の先生や、何十年も教え方を変えていない年老いた先生の授業など、足元にも及ばないだろう。
鍛錬を積んだ配信者が、ハイレベルな授業を、無料で提供してくれているのだ。しかも授業のように、受けられる時間が決まっているわけではない。いつでも好きなときに、必要な教科を学べる。知的欲求の高い子どもにとっては、本当にいい時代になった。勉強するだけなら、塾にも学校にも通う必要性は、ほとんどないのだ。


