教育システムがアップデートされていない
いまの子どもたちは将来、より高度な学習を重ね、先行きの見えない社会に出て行くことになる。2025年以降は、僕たちがIT革命で経験した以上の変化が、脅威的なスピードで押し寄せるだろう。その変化の直撃を浴びる現代の小学生が、義務教育をこれまでどおり、みんな一緒に受け続けるスタイルでは、準備が足りなさすぎる。
そもそも1960年代からトップレベルだという教育のシステムが、ほとんどアップデートされないのに、いまだ高く評価されていること自体がおかしい。変わるべきときに変われないシステムが、テクノロジーで廃れていくのは、近代世界の常識だ。
日本の小学校の教育が、世界の研究者の間で「昔は良かったけどね……」と言われるのは、そう遠くない現実だと思う。小学校にまず導入されるべきは、個別最適化学習だ。ひとつの教室に数十人、子どもたちを集めて同じ勉強をさせるスタイルが、まったく理に適っていない。重ねて言うが、それが向いている子どもは構わない。
でも好きなことを自分で、勝手に勉強する方が、能力を伸ばせる特性の子どもは、必ずいるはずだ。本書でも紹介するギフテッドの子どもや、集団が苦手だという子どもなど、独学最適型の児童には、個別最適化学習が強く求められる。
小3の恩師の言葉「八女市から出ないともったいない」
恩師という存在は特にないのだけれど、ひとり挙げるとすれば、小学校のときに出会った星野先生だ。
星野先生は僕の小学3年生のときの担任で、福岡・八女市の田舎には珍しい、ちょっとファンキーな雰囲気のおばちゃん先生だった。僕が普段から百科事典を読んでいたり、祖母が唱えていたお経を完コピしたり、他の子より暗記力が高いのを褒めてくれた。田舎にありがちな閉鎖的な雰囲気に合わず、同級生から理不尽な目に遭って、めちゃくちゃキレたりする僕の個性も、しっかり認めてくれた。子ども心に味方だなと感じられる、数少ない大人だった。
ある日の放課後、僕は星野先生に言われた。「あなたは八女市から出ないともったいない。久留米に全教研という進学塾があるから、そこで勉強しなさい。堀江くんみたいな人が、何人もいるはずだから」と。
そして「塾で勉強して、久留米大学附設中学を受験すべきよ。あなたの居場所も、きっとあるはず」とも言われた。
そんな選択肢があるとは、知らなかった。星野先生のアドバイスに従い、僕は久留米の全教研に通うようになった。そこには地元の小学校にはいない、頭の切れる感じの子どもが、たくさんいた。孫正義さんの弟の泰藏くん(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の創業者)も、同じ時期の塾生だ。


