「学校行きたくない」を生むもの
【勅使川原】この対談の事前打ち合わせで見せていただいたときから、とても印象に残っていて。今、小学6年生の息子に見せたら、生意気で恐縮なのですが、「この人、わかってんじゃん」と言っていたんですけれども(笑)。
息子もまさに学校で日々、「規範に合わせなさい」と、協調的に動くようとがめられがちな人間なのでめちゃくちゃ刺さっていたというか、「こんなおとながいるんだ……」と驚嘆した様子でした。「これくらいできないと……」という観念とひもづけて、今日はぜひ詳しくお聞きしたいと思っています。
【武田】息子さんにお褒めいただき光栄です(笑)。
一緒に「正しさカード」を作っている人は、小学生のお子さんがいるお母さんなんですけど、ご自身も人前で話すのがすごく苦手だったし、お子さんもとても苦手で、「元気にハキハキと」言わないといけないのと、定型文をやたらと言わされるのがとてもしんどいと。
例えば学校って、おうちの人に書いてもらって提出するものがあるじゃないですか。小1のお子さんは、「教室に入るのも緊張する……」という状態で、そういう提出物を先生に出すときに言葉が出せず無言で差し出したところ、「“お母さんから預かってきました”は?」と言い直しを求められたんだそうです。しばらく沈黙状態になり、最終的に受け取ってもらえたものの、翌日からも毎日そういうやりとりがあり、「学校行きたくない」となってしまったと。
「できるけどしんどい」が許されない
その先生としては、たぶん社会化の練習として課したんですよね。別に意地悪しようと思ったわけではないと思います。でも、そういうのでしんどくなる子もいるんですよね……。
【勅使川原】何か、気持ちがすごくわかる。昔って、切符は券売所で声に出して、行き先を言って買っていたんですよ。当時、自動券売機というものがなく(笑)。在来線に乗ってどこへ行くにも、「どこどこまで、子ども1枚」とかって。私はあれが言えなくて。やっと言って手渡された切符は、手汗でしなしなになる始末。それをすぐに思い出した。
【武田】私は挨拶は苦になりませんが、電話が苦手ですね。かけるのもとるのも。誰が出るかがわからない場合は特に、めっちゃ緊張します。必要なときは仕方なくしますが、なるべく避けたいことの一つです。


