説明がわかりにくい人は、頭の中で話が整理されていない。そこで役立つのが「数学的思考」だ。数学が得意でなくても、5つの要素さえ意識すれば活用することができるという。その基本を学ぼう。

数学とは「説明」である

わかりやすい説明をするために、必要なこととは何でしょうか。もちろん流暢な話術や要点が整理された資料があれば、説明は伝わりやすくなります。しかし、私が何より欠かせないと思うのが「数学的思考」です。

「数学」と「説明」がどう結びつくのか、疑問に感じるかもしれません。本来、数学は計算問題を解くことではなく、「三平方の定理」などのような公式や法則、あるいは「○○であることを証明せよ」といった問題のように、数字と論理を使って説明することです。つまり、「数学は説明である」と言っても過言ではなく、もともと親和性が高いのです。

そして、数学的思考とは「数学のように考えること」。言い換えれば「数学をするときに頭の中でする行為」のことです。これらは決して特別な思考法ではなく、みなさんが普段無意識に行っていることでもあります。具体的には「定義」「分析」「体系化」によって物事を考えていきます。

「定義」は「Aは〜と定めること」です。最初に定義がないと、その後の議論や説明が成り立ちません。「分析」はおもに「分解」と「比較」の2つから成り立ちます。「分解」は物事を塊=要素ごとに分けることです。「比較」は物事を他の何かと比べることで、その物事に意味づけをします。

「体系化」は「構造化」「モデル化」の2つに分けることができます。あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、「構造化」は物事を構造で捉えること、「モデル化」は公式や法則などの「型」に整理することです。

わざわざ数学を学び直さなくても、この5つさえ身につければ数学的思考は可能です。思考が変われば、自然と話し方も変わります。数学的思考を身につけることで、わかりやすい説明ができるようになるのです。

わかりやすい説明をする人には、共通する話し方の型があります。それは、「導入」→「主張」→「解説」→「結論」のフローで話すことです。数学の論述もこのフローで行われています。本題に入る前には「導入」が欠かせません。そのうえで本題部分にあたる主張と解説を行い、最後にまとめの意味で結論を伝えます。この説明のフローに数学的思考を当てはめると、導入で「定義」をし、解説の中で「分解」「比較」「構造化」「モデル化」を行うことになります。

ここで最も大切なのは、最初の導入です。セミナーや研修などでビジネスパーソンの話を聞くと、導入に工夫のない人が多いように感じます。そして、「大事な商談やプレゼンで、最初に何を話しますか?」と聞くと、9割方の人が「結論から」と答えます。「結論から先に話す」説がビジネス界の常識になっているようですが、それよりも先にやらなければいけないのが、「定義」をすることです。話す目的やゴール、あるいは説明で使う言葉の意味など、その後の説明の前提となることを先に話しておかないと、その後にする話で聞き手の誤解を招き、説明が無意味なものになりかねません。

主張に説得力を持たせるのが解説ですが、この解説が苦手という人も多いです。その場合、まずはシンプルに「分解」と「比較」に取り組んでみるとよいでしょう。それができるようになったら、「構造化」「モデル化」を試してみる順番が理想です。

それでは説明の質を高めてくれる5つの数学的思考について、それぞれ解説していきましょう。