※本稿は、宮口幸治『境界知能 存在の気づかれない人たち』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
勉強しても50~60点とれればいい方
小学4年生の男児C君の母親が教育センターへの相談で来所されました。小学2年生のときにも一度来所したのですが、そのときは担当者から様子をみようといわれたとのことです。
今の学校の担任から「漢字も少し丁寧に書けるようになってきたけど、すぐに忘れてしまう。文章の意味理解は難しい。複雑な計算や文章題では時間がかかりスピードが遅い。テストは50~60点とれればいい方で、20~30点のときもある」といわれ、母親は「発達障害ではないか」と心配していました。
C君の父親も、最近はコツコツと勉強するようになったが、テストとなると結果が出ないというので少し不安になっていたようです。勉強面以外にも「同じ質問を何度もする。同級生と会話が続かない。冗談が分かりにくい。場面をみて状況判断ができない」といったことも担任から指摘されていました。
精神年齢は「マイナス2~3歳」
小学1年生時は1学期でひらがなが覚えられず、小学2年生で九九は何とか覚えたようですがしばらくすると忘れてしまい、計算では指を使って計算していました。小学3年生から同級生にからかわれることがあり学校での問題行動が増えてきました。同級生への「死ね」「消えろ」といった暴言が始まりました。学校が母親に連絡しても「家では困っていない。学校が困っているだけ」と返されたといいます。
小学4年生になると本人にやる気がみられなくなり、授業中、ぼーっとすることが増え、自分で考えようとせず、促さないと板書も写さなくなり、学校を休むことも増えてきたというのです。
そこで相談と並行して心理士さんに知能検査をしてもらいました。するとC君は「IQ:80」で境界知能であることが分かりました。境界知能の子どもは同じ年齢の子に比べて知的能力が約7~8割くらいとされていますので、小学4年生が10歳だとすると、C君の精神年齢はおよそ7~8歳、つまり小学1~2年生に相当することになります。
もちろん10年間の生活経験がありますので、単純に小学1~2年生の子と全く同じという訳ではありませんが、大体の知能水準を把握する上では参考になります。

