6月23日、東京電力ホールディングスの新体制が正式に始動した。取締役は大半が入れ替わり、社長には54歳の小早川智明氏、会長には日立製作所名誉会長で77歳の川村隆氏が就任した。川村氏は日立のV字回復を成し遂げた名経営者だ。一部から経団連会長も嘱望されたが、それを固辞。しかし今回、77歳という高齢にもかかわらず、東電会長という重職を引き受けた。栄誉を極めた川村氏は、なぜリスクをいとわず、東電の経営に乗り出すのか――。
世間を驚かせた名経営者の会長就任
川村氏は1962年に日立製作所に技術者として入社。火力発電所、原子力発電所などの開発に携わり、99年には副社長に就任。2003年に退任後はグループ会社の会長を務めていたが、09年、転機が訪れる。
日立製作所は09年3月期決算で、7873億円という巨額の赤字を計上する。当時、国内製造業では過去最悪の数字だ。川村氏は「沈みゆく巨艦」とも形容された古巣からの呼びかけに応じて、社長に就任。3年後の12年3月期決算では過去最高の純利益を上げるなど、短期間で奇跡のV字回復を成し遂げた。
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