月間1億回以上再生される料理レシピ動画サイト、「クラシル」を運営するdely。経営者は21歳で起業した若者で、孫正義が社会を変える姿に感化されたという。24歳で約40億円を調達、5年でクックパッドを超すと語る、その鋭い目線の先にあるものとは。
田原総一朗×dely 代表取締役 堀江裕介

本田圭佑になるか孫正義になるか

【田原】堀江さんは高校球児だったそうですね。将来は体育教師になろうと思っていた。なぜ起業家に?

【堀江】きっかけは東日本大震災です。僕は当時受験生で、新潟で3.11を迎えました。地震の後は自分で募金したり、東北でボランティアもしました。でも、たいしたことはできなくて、これじゃダメだなと。

【田原】どういうこと?

【堀江】被災地に行くとボランティアのために仕事が用意されていて、自分は本質的に何も役に立っていないことを痛感しました。一方、ソフトバンクグループの孫正義さんは被災地に100億円を寄付すると公言した。将来、体育教師として頑張れば目の前の30人の人生を変えられるかもしれません。でも孫さんのように社会にもっと大きな影響を与えたければ、体育教師じゃないなと。

【田原】それで孫さんになることを目指したわけね。

【堀江】世の中に大きなインパクトを与えられるのはアスリートか芸能人か起業家だと思っています。たとえば僕はサッカーの本田圭佑選手にもすごく影響を受けています。でも、残念ながらプロのスポーツ選手としてやっていけるほどの才能はない。本田圭佑になるか、孫正義になるかと考えたとき、実現可能なのは孫さんのほうだろうと考えました。

【田原】堀江さんは慶應義塾大学に進学される。どうしてそのとき孫さんの会社に行かなかったのですか。

【堀江】じつは孫さんに会いたくていろいろ連絡してみました。でも、相手にされないわけです。孫さんに会うには、まず自分が何者かにならなくてはいけません。それにはソフトバンクに就職して出世するより、起業したほうが早いだろうなと。それで起業家を大勢輩出している慶應の湘南藤沢キャンパスに進学しました。

【田原】でも、起業するなら大学なんて意味ないでしょう。

【堀江】そうですね。慶應も昔はたしかに大勢の起業家がいました。クックパッドの佐野陽光さんも慶應出身で、授業に来てくれたこともあります。でも、最近は目立った起業家が少なく、同級生にもいなかった。これなら実際に働いたほうが早いと思って、クックパッドの子会社で働き始めました。