経営は苦しい、だからこそ楽しい

【田原】課金型のサービスは拡大させますか?

【堀江】考えています。たとえば全レシピのカロリーがわかるとか、無料ユーザーが見られないリッチな動画も見られるとか、プラスアルファの機能を検討中です。

【田原】まだこれからですか。

【堀江】まずはクックパッドを超えてからです。いまはまだユーザーを呼び込む段階。まず3年でクックパッドのユーザー数を追い抜いて、5年で売り上げも抜く。それが目標です。

【田原】海外はどうですか。

【堀江】やりたいです。レシピ動画は海外でもイケるはずです。海外で日本食は注目されていますが、つくり方が独特でわからないので、ブログで調べている人が大勢います。クックパッドの海外展開がうまくいっていないからクラシルもダメだと言われますが、クックパッドが苦戦しているのは国内の資産を活用できていないから。僕らは違います。

【田原】どういうこと?

【堀江】クックパッドはユーザー投稿型。国内のレシピを海外に持っていくには、一つひとつ英語に翻訳しないといけません。現実的にそれは難しいのでクックパッドは海外でゼロからサービスを立ち上げるしかない。一方、僕らは自社でつくっているので、テロップを日本語から英語に変えるだけ。動画という資産をそのまま活かせるので有利です。

【田原】最後にお聞きしたい。別のインタビュー記事で、「苦しみが9で、楽しみは1」とおっしゃっていた。どういう意味ですか。

【堀江】僕は本田圭佑選手の生き方が好きなんです。本田選手は「ワールドカップで優勝します」と、言わなくてもいいことをあえて公言して、自分を追い込む。僕も同じで、自分の発言で苦しくなっている部分があります。でも、経営者としては、苦しい状態こそが素晴らしい。いま24時間100%経営のことを考えていますが、それ以外のことをしてもまったく楽しくないです。

【田原】同じことを松下幸之助が言ってました。苦しいから楽しいんだと。

【堀江】この感覚は生きているかぎりずっと続くでしょう。クックパッドを倒すイメージはもうできています。その後は僕の妄想のスケールしだいですが、たぶんもっと社会的に意義がある目標を掲げてまた戦い続けて、もがき苦しむことになる。でも、それが楽しいんですよね。

堀江さんから田原さんへの質問

Q. 孫さんのような経営者になるには?

孫さんは勝負師です。じつは孫正義を日本のマスコミで最初に取材したのは僕です。当時、孫さんの会社は従業員3人で、麹町の地下の一室にあった。ソフトバンクというからソフト開発の会社かと思ったら、「ゴールドラッシュで儲けたのは、金を掘る人ではなくバケツを売った人。僕はソフトの流通をやる」と言う。とてもおもしろい挑戦だと思いました。

孫さんはその勝負に勝って会社を大きくしたけれど、その後も節目節目で、のるかそるかの大勝負を仕掛けています。松下幸之助や本田宗一郎もそう。社会的評価を得た後も、現状に満足せず勝負できるかどうか。それを続けられる人が、歴史に名を残す経営者になるのです。

田原総一朗の遺言:一生涯、勝負し続けよ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、三井エージェンシーインターナショナル代表 三井悠加氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、6月26日発売の『PRESIDENT7.17号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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