そもそも「スパ」とは何をする場所なのか?
“国民病”といわれる花粉症。厚生労働省のウェブサイトでは、「有病率は全国平均で15.6%」というデータが紹介されている。日本の総人口は約1億2683万人(今年2月1日現在)なので、ザッと見積もって1900万人が花粉症に悩んでいることになる。
換言するなら、花粉症関連の市場は1900万人の潜在顧客を抱えているわけだ。これは、なかなかの巨大市場である。企業側からすれば、花粉症は商機だ。マスクやメガネといった定番商品だけでなく、あらゆるサービスが「花粉症」に紐付けることで、需要拡大が狙える。
そうしたなか、高級ホテルが「花粉症対策」のサービスを手がけているのをみつけた。ハイアット リージェンシー 東京(東京・新宿区)では、28階にあるスパ&ウェルネス「ジュール」で「花粉症対策 デトックス スパ パッケージ(以降、花粉症スパ)」を提供している。料金は……105分3万7800円(税込)。見た瞬間、思わず「高いっ!!」と叫んでしまった。
一体、どんな人が利用するのか。それが率直に感じたことである。ハイアット リージェンシー 東京の宿泊料金は1名2万3375円から(楽天トラベル3月10日現在、日付未定)。「花粉症スパ」の利用料金で、ホテルに泊まれてしまう。そもそも「スパ」が何をする場所なのかもよくわからない。
調べてみたところ、スパの本来の意味は「温泉・鉱泉」だ。そこから「温泉・鉱泉の出る保養地、保養施設」も指すようになった。そして近年では、癒し効果や疲労回復など心身のリフレッシュに重点を置き、マッサージなどの施術を行う温浴施設のことも「スパ」と呼ぶようになっている。「花粉症スパ」もこれに該当し、「花粉の季節の不快な気分をすっきり、リフレッシュへと導く」という。
とはいえ、スパのことを大まかに理解できても、利用者がどうもイメージできない。そこでさっそく、同ホテルに問い合わせてみた。マーケティング部の支配人である野崎かおり氏は、次のように説明する。
「スパにいらっしゃるお客さま全体で見ると、宿泊されている方が多いです。外国人のお客さまも少なくありません。ただ、スパだけを利用される日本人ビジネスパーソンの方もいらっしゃいます」
高級ホテルをよく利用するような富裕層か、経費を潤沢に使える出張組、高収入サラリーマンあたりがユーザーの中心ということか。それにしても、効果のほどが判然としない花粉症対策に、悩まず3万7800円を支払える人が、そんなに多いとは思えない。
「たしかに『花粉症スパ』を最初から選ばれる方は、あまりいらっしゃいません。そもそも、施設や各種パッケージの存在自体をご存じではない方が多いので。もともと『ジュール』では、お正月シーズン直後のお正月太り対策プランや、東京マラソンのスタート地点に近いことにちなんだランナー向けプランなど、さまざまなメニューを展開してきました。『花粉症スパ』も2012年から提供しています。イベントや季節に合ったメニューを打ち出し、ホテルに宿泊しないビジネスパーソンの方々にも利用してもらえれば嬉しいですね」
野崎氏は「『花粉症スパ』を利用した多くの方は、『これはスッキリする』と満足されてお帰りになります」と語る。そんなに効くの!? と半信半疑な記者の気配を察してくれたのか「よろしければ、ぜひ体験を!」と熱烈なお誘いがあり、今回、料金無料で施術を受けられることになった。