「マスクはぜんぜん儲からない商品(苦笑)」

「さて、どれを選べばよいのやら……」

花粉症の季節、ドラッグストアの店頭やレジ周辺には、選択に迷うほど多種多様なマスクが並ぶ。ここまで強烈にプッシュしているのだから、さぞや売れているに違いない。そう思っていた。

「マスクですか? ぜんぜん儲からない商品ですね」──そう苦笑するのは、都内のとあるドラッグストアで店長を務める加藤賢吾氏(仮名・32歳)。

「ドラッグストアの全売上で見ると、マスクの割合は低いです。都内のドラッグストアの平均的な店舗では、年間3億円程度の売上があります。そのうちの半分、およそ1.5億円は医薬品と化粧品が占めています。マスクを含めた日用品の売上は10%ほどの3000万円程度。マスク単体だとそのうちの10%にも満たないかもしれません。まあ、そこそこ売れても年間で300万円程度でしょうか。マスクがよく動くシーズンは12月から翌年4月にかけての時期ですね。やはりインフルエンザと花粉症が意識されるころが、いちばん売れます」

単価が高い医薬品や化粧品がドラックストアにおける売上のメインで、日用品はあくまでサブ的な存在というわけだ。それでも、花粉症シーズンになると、ドラッグストアはあまり儲からないマスクを各種取り揃える。その理由は、季節モノの定番商品であり、買い求めるユーザーが増えるから、そのニーズに応えるため。……というのは、あくまでタテマエであって、本音は他にある。

「この時期のマスクは、要するに“客寄せパンダ”。ドラッグストアでは、いちばん目立つところに季節の注目商品を配置します。具体的には店頭やレジ横、店内の動線で重要な通路横などですね。お客さまの目に触れる箇所に、夏なら日焼け止めや虫避けスプレー、冬なら風邪薬や年末の大掃除に向けた掃除グッズ、残暑が厳しい秋は栄養ドリンク、といった商品を取り揃えておきます。花粉症シーズンには、マスクを配置するのが鉄則なんです」