臨床研究が進むスギ花粉米

食べるだけで花粉症を治すコメがある。

そのコメとは「スギ花粉米(旧称:スギ花粉症緩和米)」。正式には「スギ花粉ポリペプチド含有米」および「スギ花粉ペプチド含有米」と、呼ばれている。農林水産省所管の研究機関である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発し、現在、臨床研究が進められている段階だ。

「スギ花粉ポリペプチド含有米」はコシヒカリ、「スギ花粉ペプチド含有米」はキタアケ・日本晴の遺伝子を組み換えることで誕生した。元の品種と栄養分の組成は変わらないので、風味や味はほぼ同じだという。すでに動物を用いた安全性実験で厳格な基準をクリア。2016年11月からは大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターと東京慈恵会医科大学で、患者が参加しての臨床研究が行われている。

試験栽培時の「スギ花粉米」

この研究では、100グラムのご飯(白米)のなかに0グラム、10グラム、40グラムのスギ花粉米が含まれた3種類のパックを用意し、それぞれ15人ずつの患者に食べてもらう。期間は2016年11月から2017年の4月までの半年間。その間、定期的な血液検査を実施し、スギ花粉の飛来が始まる2月からは、毎日の自覚症状を「アレルギー日誌」につけてもらっている。

摂取期間終了後にデータを整理し、スギ花粉米の量と症状の改善に相関関係があるかどうかを解析する。研究を進める農研機構の高野誠氏は「一定期間食べるだけでスギ花粉にもう悩まなくなる。そんなスギ花粉米の開発を目指しています。研究開始から5か月ほど経過していますが、とくに健康被害の報告はありません」と話す。