スギ花粉米でアレルゲンに「慣れる」

そもそも花粉症とは次のステップを踏んで起きると考えられている。

  • (1)目や鼻に花粉(アレルゲン)が侵入する。
  • (2)リンパ球が花粉を侵入者と認識。
  • (3)リンパ球がアレルゲンに対抗する物質「IgE抗体」を生成する。
  • (4)鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にIgE抗体が粘着。
  • (5)再び花粉が体内に侵入。IgE抗体と結合する。
  • (6)侵入者を体内から追い出そうと肥満細胞が化学物質(ヒスタミンなど)を分泌。
  • (7)結果、目の充血や鼻水、くしゃみなどのアレルギー反応が起きる
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つまり「涙や鼻水がおさまらない」「くしゃみがとまらない」といった花粉症の症状は、異物を体外に放出しようとする自己防衛機能ということである。

しかし、いくら自己防衛のためとはいえ、花粉が飛散する期間中、涙や鼻水、くしゃみのオンパレードではストレスが溜まるばかりだ。仕事の作業効率が低下し、ビジネスにも支障をきたす。対策として、マスクやゴーグルを着用したり、服薬したりすることになるわけだが、これらは所詮、対症療法にすぎず、抜本的な対策にはならない。何より、マスクやゴーグルを着け続けるのは面倒だし、薬は飲み忘れてしまったり、飲むと眠くなってしまったりして煩わしい。その点、体質そのものを変えてしまう「スギ花粉米」は、毎日の食事のなかで何の苦労もなく摂取することができる。これは、楽チンだ。

では、スギ花粉米はどのようなメカニズムで花粉症の症状を緩和してくれるのだろうか。

ポイントは前述の「(2)リンパ球が花粉を侵入者と認識」の段階にある。ここで身体が花粉を「味方」と認識すれば、花粉症の症状は起きない。そこで、食べてもIgE抗体と結合しないよう、少し細工を施したアレルゲンをスギ花粉米の特殊な部分に組み込んでおく。そうすることで、スギ花粉米に組み込まれたアレルゲンは、胃で消化されることもなく、人体のなかでも最大の免疫器官である腸まで届くのだ。

その結果、効率よく「免疫寛容=アレルゲンに慣れていく人体の働き」が促進されて、アレルギー症状が改善していく、という具合。こうした「アレルギーの原因となるものを少しずつ口から体内に取り入れて、慣らしていく」という治療を「経口免疫療法」と呼び、近年、非常に注目されるようになっている。