弘兼憲史の着眼点

▼スーツ姿に嵌るスニーカーとは?

スニーカーと聞いて思い出すのは、1988年の映画『ワーキング・ガール』です。ニューヨーク・ウォール街の投資銀行で働く登場人物の女性たちは、通勤途中、スーツ姿にスニーカーでした。

ニューヨークはアスファルトが荒れていたり、石畳があったりと、女性のヒールなどでは歩きにくい。様々な路面に対応できるスニーカーを履くのは実に合理的だと思ったものでした。

弘兼「日本独自の商品はあるのですか?」冨田「あります。国によって色目などの好みが異なりますね」

とはいえスーツ姿に合うスニーカーは限られています。その点、ニューバランスのスニーカーは主張が強くなく、どんな服装にも溶け込みそうです。

冨田さんと話しているうちに、そうしたスニーカーのイメージはニューバランスという会社の体質を反映しているのではないかと思うようになりました。

家族的で職人的――。

スポーツブランドに限らず、グローバル企業は、人件費の安い発展途上国で大量生産して、世界中で販売しています。しかし、ニューバランスはアメリカ生産、イギリス生産にこだわり続けている。グローバル企業と小規模企業のいいとこ取りをしているのかもしれません。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。
(田崎健太=構成 門間新弥=撮影)
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