キリスト教の総本山も認めた!

オペラ歌手になるためミラノに移住して、今年でちょうど20年になります。海外にいると、どうしても日本人の仲間で集まってしまいがちですが、イタリアの音楽を表現するには身も心もイタリア人になりきるしかない。そこではじめの2年半は、もっぱらイタリア人とだけつきあい、食べるものも彼らとまったく同じものしか食べないと決め、日本食は一切食べませんでした。おかげで15キロ太りましたが、今ではイタリアにしっかりと根をおろすことができたように思います。

テノール歌手 榛葉昌寛氏

そんな私が日本のために何かしたいと思うようになったのは、東日本大震災がきっかけでした。私にできることは歌で人々の悲しみを癒やし、元気づけること。そしてイタリアにはキリスト教の総本山であり世界中から年間11万人が訪れるバチカンがある。

もしバチカンでコンサートができれば、世界中に情報が発信できる。そう考えて音楽仲間に協力してもらい、伝手をたどった結果、バチカンのフランチェスコ・モンテリーズィ枢機卿にお会いすることができたのです。枢機卿は即座に、バチカンの四大聖堂のひとつである聖パオロ大聖堂をコンサート会場に使うことを許可してくださいました。聖パオロ大聖堂はキリストの二番弟子であるパオロのお墓の上に建てられたという由緒あるもので、カトリックの信者ではない者、しかも日本人の催し物のために使うのは前例がなかったそうです。

そうやって2013年3月11日に第1回が開かれた「バチカンより日本へ祈りのレクイエム」ですが、今年で第4回を迎えることができました。