昨年は仙台、石巻など東北を含め、日本で7公演を行いました。被災地の会場は体育館など音響設備が十分でないところも多いのですが、いずこも超満員。

イタリア人オーケストラの太陽のような明るさが、東北の人たちを笑顔にするのかもしれません。

イタリア人は音楽を聴いて感動すると、涙をポロポロ流しながら「ブラーヴォ!」と叫ぶけれど、日本人は感動すればするほど声が出なくなる。そんな反応の違いも面白いですね。

私は静岡県掛川市の出身で、掛川市ふるさと親善大使も務めています。今年は日本とイタリアの国交が始まって150年。

これを機に、掛川市とイタリアのペーザロ市が姉妹都市提携を結びました。ペーザロ市は数々のオペラを作曲したロッシーニの生まれた街です。ふつう、姉妹都市になる前は1年ほど友好都市として提携するものだそうですが、今回は市長同士が意気投合し、ぜひ150周年の今年のうちに姉妹都市になろうということでそれが実現しました。これも音楽の力のおかげでしょう。

11月27日には鎌倉の覚園寺でコンサートを開きます。紅葉を愛でつつ音楽を楽しみ、この日のために調合したお香と、イタリアのラ・モンティーナというフランチャコルタ(スパークリングワイン)を味わうという五感を満たす贅沢なひと時になりそうで、私も期待しています。

テノール歌手 榛葉昌寛
1966年、静岡県生まれ。東京芸術大学卒業後、国際ロータリー財団奨学生としてイタリア国立ミラノヴェルディ音楽院で学ぶ。99年、テーラモ市立劇場での「椿姫」アルフレード役でイタリアの劇場にデビュー。日伊両国を中心に活躍中。ミラノ在住。
(長山清子=構成 本多ハル子=撮影)