激務もいとわず、ひたすら上だけを目指す社員はどんな組織でも一部にすぎない。強い野心はなくても、堅実に会社に貢献する多数派の社員をどう活用するかが成功の鍵を握るのだ。

組織の大部分を占めるのは堅実な一般社員

ほとんどの社員はスター・プレーヤーでもなければ、怠け者でもない。彼らをBクラス社員もしくは堅実な一般社員と呼ぶとして、その割合は一般的な組織で社員の50%以上を占めており、企業は彼らなしには生き延びることができない。

が、これらの堅実なパフォーマーは受けるべき関心を必ずしも受けてはおらず、持てる力を十分には発揮していない。これから示すアドバイスの多くは、どんな社員のマネジメントにも広く適用することができる。だが、重点は堅実な一般社員から最大限の力を引き出すことに置かれている。

まず、忘れてはならないのは、ある組織の堅実なパフォーマーは別の組織ではスターとみなされる可能性があり、また、その逆もありうるということだ。たとえば、急成長中のハイテク企業なら、1年365日、1日24時間ぶっ通しで働くこともいとわない技術の専門家にトップレベルの地位を与えるかもしれない。だが、消費財を扱うグローバル企業は、駆け引きの能力と数年ごとの転勤を喜んで受け入れるか否かを重視するかもしれない。

もう一つ、堅実な一般社員はもっとバリバリ働く同僚と比べて必ずしも頭が悪いわけでも能力が劣っているわけでもないということだ。多くの場合、彼らはただ単に別のことを優先させているのである。

Aクラスだけのチームをつくるのは一見、理想的に見えるかもしれない。だが、一つの部屋に大勢のスターがひしめき合っていて、全員が目立つ仕事や昇進を求めていたら、「酸素」が残らない。スター・プレーヤーは自分のキャリアを第一に考え、組織は二の次にするきらいがあるのは確かなのだ。

それに対しBクラス社員は、脚光を浴びなくても不満を抱かず、概して組織に忠誠を尽くすと、ハーバード・ビジネス・スクールのフィリップ・J・ストムバーグ記念講座教授であるトーマス・J・デロングは言う。Bクラス社員はより長く会社にとどまる傾向があるため、組織に関する深い知識と豊かな人脈を築き上げる。それは変化の時期に、上司にとって計り知れないほど有用になることがある。「彼らは文化を築き、維持してくれる」と、デロングは言う。「彼らは組織を一つにまとめる接着剤なのだ」。