製造業のほうが対処しやすい

「複雑さ」が企業に害を及ぼすということは、ほとんどの企業幹部が認識している。先ごろ、ベイン・アンド・カンパニーが世界の960社の幹部を対象に調査したところ、70%近くが、複雑なサービスやシステムはコストを押し上げ、成長を妨げていると答えた。サービス業の場合、製品構成の複雑さが目に見えにくいため、特に致命的なのだ。

製造業なら、倉庫にある在庫の山、多様な製品のための生産ライン切り替えの際の不稼働期間、売り場やショールームの売れ残り商品など、いたるところに証拠が見て取れる。対して、サービス業では、複雑さはほとんど目に見えず、際限なく増大することがある。新「製品」は往々にして、既存のサービスやキャンペーンのために、コールセンターの人員や応答マニュアルを少し追加するだけで発売できる。が、実はそれに伴う害も大きい。ほとんどの企業は、基本プロセスの部分で増大する隠れたコストを計算に入れていないからだ。

サービス業の製品構成の複雑さは、いったん生じたら避けられないほどの不利益をもたらす。問題が起こってから製品の種類を減らしても、問題は解決しない。これは、廃止された製品を購入、今も保有している顧客にサービスを提供し続けなくてはならないからで、資源を浪費し、組織の関心をもっと重要な課題からそらせる恐れがある。最善の防御措置は、顧客のニーズや製品や市場が変化する中で、複雑さを制度的に排除し続けることだ。

では、どうすれば際限なく増大する複雑さを制御できるのか。まず、賢明な製造業のやり方を取り入れることだ。製造業は、徹底的に簡素化した環境で商品製造プロセスを理解するため、製品をゼロから検討するところからスタートする。もちろん製品を1種類にするのは現実的ではないが、この実験によって、思考が解き放たれ、限界を広げる可能性が高まる。

製品構成を白紙状態から検討することで、企業幹部は以下の3つの重要なステップに集中することができる。

──どこに複雑さが蓄積しているか、また複雑さの真のコストはいくらになるか査定する。
 ──最優良顧客のニーズを確実に満たすのに必要な製品だけを取り入れる。
 ──変化する顧客の嗜好を満たす新商品開発を行いつつ、そこに複雑さが忍び込まないよう注意深く目を光らせる。