新たなポジションのリーダーをオファーされたとき、給与や休暇といった条件以外のことについてきちんと交渉しただろうか。スタートダッシュ時のチャンスを逃さないための戦略を伝授する。
新しいチームなり、部門なり、会社なりを指揮してくれと頼まれたとき、あなたは、給与や休暇など以外に成功するために必要なものを獲得する交渉は行っただろうか。
ジュディス・ウィリアムズ、キャロル・フローリンガー、それに私の3人は、われわれの共著、“Her Place at the Table: A Woman's Guide to Negotiating Five Key Challenges to Leadership Success”(2004)の調査で、新任リーダーが往々にして貴重なチャンスを見落とすのは、3つの間違った思い込みのせいであることに気づいた。その思い込みとは、(1)私の選択肢はイエスかノーしかない、(2)私の任命自体が私の適格性を自ずと物語るはずだ、(3)私は資金不足でもやっていける、である。
思い込み1:私の選択肢はイエスかノーしかない
潜在力のある業績不振部門を引き受けてくれと頼まれたとしよう。そのポジションに関心はあるのだが、私生活を考えるとやっていけるとは思えず、断ることにする。しかしイエスかノーしかないと思い込んでいると、あなたの返事は「はい、お受けします」、もしくは「いいえ、お受けできません」という断定的な表現になる。
選択肢がいかに限られているように見えても、その職務をあなたの希望やあなたという人間にもっと適合するものにするために交渉できることはたくさんある。だが、それらの可能性を認識するためには、自分自身を十分交渉できる立場にいるとみなす必要がある。
戦略1:自分に適した職務にするために交渉しよう
ポジションをオファーされるのは、あなたが価値を提供するからだ。交渉する際には、自分がその職務にどのような価値を持ち込めるかを伝えることが、自分の望むものを獲得するための必須要件になる。自分の価値を明確に把握するためには、なぜ自分がそのポジションをオファーされたのかについて情報を集める必要がある。
セールス・エグゼクティブのヘレン・ジェームズは、昇進をオファーされたとき、滅多にないチャンスだと思った。だが、彼女には幼い子どもがおり、そのポジションに伴う出張は引き受けられなかった。
ジェームズは自分のネットワークから情報を集め、上司たちが彼女を適任と判断したのは彼女に世界各地の流通業者へのセールスの経験があるからだということを知った。そこで彼女は、その部門の職務分担を変えてほしいと交渉した。その部門にはすでに2人の次長がおり、その2人が新しい責務を引き受けて世界各地の顧客に対応する。ジェームズは本社で戦略を開発し、彼女の専門知識が必要な場合にのみ顧客と会うというわけだ。一見、交渉の余地がなさそうに見えるオファーに対して交渉することで、ジェームズはすべての当事者の利益になる代替策を生み出したのである。