今、多くの組織では、これまでの常識をすべて覆すほどの大変革を迫られている。部下の不安をかきたてずに、前向きに変えていくプロセスを紹介しよう。

不況時の変革ほど、強い抵抗と不安をかきたてるもの

組織の変革構想は、好景気時でさえ社内のあらゆる階層に不安を呼び起こす。だが、リーマン・ブラザーズのような伝説的な企業がほぼ一夜にして倒産したり、株価がめまぐるしく変動したりする時代には、変革構想は恐怖を引き起こし、パニックさえ誘発することがある。

そんなとき、変革の呼びかけはひときわ強い抵抗を引き出すこともある。今日のように外部環境がきわめて不確実な時代にこそ、人は自分の組織内では不変性や決まりきったやり方を強く望むものだ。しかし、言うまでもなく、企業が生き残りのために迅速な変革を行う必要があるのは、たいてい経済状況がきわめて不安定なときだ。

その場合、マネジャーはうんざりするような仕事に直面する。組織が景気後退を乗り切れるようにするため、部下が変革構想を完全に支持し、日々の行動を必要に応じて変えるように持っていく必要があるのである。彼らが変化を最も不安に思い、最もいやがっていると思われる、まさにそのときに、である。

強い抵抗を引き出すのは合併や事業再編などの大規模な変革だけではない。不安定な時代には、新しいITシステムの採用、製品イノベーションの強化といった比較的つつましい変革構想でさえ、部下の不安感を激しくかきたてることがある。