「住みたい街ランキング」でじわじわと順位を上げているのが、東京・立川だ。基地のまちというイメージからファミリー層に人気の街に変貌した立川で、ほかの都市開発とは一線を画しているエリアがある。開発を手掛けた「立飛ホールディングス」の村山正道社長と、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏に話を聞いた――。
「金太郎飴みたいな街づくり」でいいのか
JR立川駅から北へ歩いて約8分。伊勢丹立川店、立川高島屋S.C.を抜けた先に、2020年4月にオープンした新街区「GREEN SPRINGS」がある。
「人が集う空と緑がある空間を作りたかったんです。都内の色々な開発を見ていますが、街づくりというと高層ビルを建てて終わりというビル中心の開発ばかりですよね。どこへ行ってもコンクリートの石に囲われた高層ビルが林立している。
ああいう金太郎飴みたいな建物ありきの街づくりは人に優しいとは言えない。最終的に人が求めるものは、自然に帰りたいという本能に即した場所ですよ。そういう街づくりをしてこそ、本来の意味で人々のウェルビーイングにつながるのだと思うのです」
立川市内に98万m2、東京ドーム約21個分の広さの土地を所有する「立飛ホールディングス」社長・村山正道は、街づくりへの熱い思いを語る。
1951年生まれ、茨城県日立市出身。専修大学商学部卒業後、1973年立飛企業株式会社に入社し、長年にわたり経理を担当。2010年同社代表取締役社長。2012年のグループ再編化に伴い現職に就任
緑あふれる広場を低層ビルがゆったりと囲む
その言葉通り、24時間365日いつでもだれでも立ち寄れる憩いの場を作った。「GREEN SPRINGS」を訪れる人々は口々に、「開放感がある」「ゆったりと落ち着ける」と声にする。敷地の真ん中に広い緑の広場を置いたのが、癒しのわけだ。
施設を企画運営する立飛ホールディングスの子会社「株式会社立飛ストラテジーラボ」によると、通常は「建築」から考える設計を、「緑」から設計する手法でデザインしたという。
まず、敷地中心に、敷地面積の4分の1に相当する約1万m2分を広場として設置。店舗やオフィスなどが入居する建物を、一部を除き地上約3階建ての高さに制限し、広場をゆったりと囲むように配置した。敷地中央に広い緑の空白部分を作ることで、緑と空を広く見渡すことのできる開放感を演出している。