「空の見晴らし」のために容積率を抑えた

GREEN SPRINGSは、土地の容積率500%のうち150%しか建物面積に利用していない。つまり、残り350%分を空の見晴らしを確保するために利用した。

牧野知弘『家が買えない』(早川書房)
牧野知弘『家が買えない』(ハヤカワ新書)

「通常、ディベロッパーは500%の容積を全部消化するというスタンスなので、敷地の中央に広場を作るという開発は絶対やりません。採算が合うかどうかまず計算して、広場は、スペースの余ったところに最後に付け足すのが一般的なのです」と話すのは、三井不動産で約15年、数々の不動産開発事業を手掛けた牧野知弘だ。

牧野は、不動産市況と日本人の住まい選びについて考察した近刊著書『家が買えない』(ハヤカワ新書)の中でも、ハコモノ開発ではない、新しい街づくりの実例として、立飛ホールディングスを取り上げている。

広場で目を引くのは、多摩川流域のメダカやドジョウ、フナなどの生き物が生息するビオトープだ。周囲に、多摩地区で自生する約500本の樹木と四季折々の草花を植えて、多摩の自然環境をそのまま再現したという。また、ベンチや休憩所「パーゴラ」など無料でくつろげるスペースも充実している。

野鳥も訪れるビオトープ
撮影=プレジデントオンライン編集部
野鳥も訪れるビオトープ

「働く、学ぶ、遊ぶ」を完結できる施設

そして、圧巻は、滝のように水が流れる全長約120メートルの階段「カスケード」。子供連れに人気のスポットで、104段の階段の所々に置かれている石のベンチに座りながら子供が水遊びするのを眺めたり、暑い日には足を水に入れて涼んだりしてのんびりした時間を過ごせる。

「立ち入り禁止の箇所はできる限り作りたくない」という村山の考えで、水路と階段の間の柵はあえて設けなかった
撮影=プレジデントオンライン編集部
「立ち入り禁止の箇所はできる限り作りたくない」という村山の考えで、水路と階段の間の柵はあえて設けなかった

広場を囲むように建つ9つの低層ビルには、商業施設が入る。村山が「街全体を活性化するためには、これまで立川に足を運んだことのない客層に来てもらうことが重要なので、立川エリアにない店をこだわって選んだ」と話すように、テナント構成は個性的だ。

飲食店など40店舗のほか、親子で楽しめる美術館や子供の屋内広場、保育園、起業ハブ、東京都の英語学習施設、無料で利用できるワークスペース、リビングルームが入居。さらに中核施設として、屋内外一体利用可能な多機能ホール「立川ステージガーデン」、ルーフトップ・スパで話題の都市型リゾートホテル「SORANO HOTEL」もある。

チェーン店は少なく、施設内にはペット専用トイレも完備
撮影=プレジデントオンライン編集部
チェーン店は少なく、施設内にはペット専用トイレも完備