制限だらけの国有地を「ノープラン」で落札
実際にGREEN SPRINGSを訪れてみると、商業スペースというより、人が集い楽しみ、学び、くつろぎ、自然を感じることのできる「ウェルビーイングな空間」だと感じる。この場所が、都内にあるほかの大型施設とは一味違うといわれる理由も納得できるはずだ。
GREEN SPRINGSの約4万m2の土地は元国有地で、立飛ホールディングスが2015年に落札した。しかし、この土地は大手ディベロッパーも尻込みするような開発制限付きの土地だった。しかも村山は「ノープランで手を挙げた」という。
当時、立川駅北口周辺に残る「最後の一等地」と呼ばれたこの土地に目を留めていた企業は、どこも軒並み入札を見送った。それほど、他に類を見ない厳しい入札条件だったのだ。
その条件とは、①「サンサンロード」と呼ばれる駅前通りの賑わいを再生すること、②多摩地区「オンリーワン」な文化系施設を建築すること、③3年以内に着工すること、④居住用施設は不可など。加えて、自衛隊の立川飛行場が近いため、航空法による45メートルの高さ制限もあった。
大手ディベロッパーが手を引いた理由
「不動産の方程式は土地面積×容積率=不動産価値なのです。その方程式に当てはめれば、この敷地でオフィスやホテルや商業施設をどんなに建てても、4万m2もある土地では採算が合わないと、大手ディベロッパーは考える。入札条件に居住用施設は不可とあったので、タワーマンションを建てて分譲して儲ける通常のやり方は無理だから、手を引いたのだと思います」(牧野)
ところが、村山はあえて常識の逆を選んだ。ある業者がこの土地を取得した後に切り売りするという情報を耳にしたことも、村山の背中を押すきっかけとなった。
立飛ホールディングスは1924年に創業し、「立川飛行機」を経て現在は不動産賃貸・開発を中心に事業展開している。
「約100年商売を続けてこられたのも、この街のおかげです。次の100年事業を継承していくには、街の発展なくしては成し得ないことです。しかもわれわれは立川市内の25分の1の敷地という社会資本を所有している。それを地域に還元し、立川の発展を支える社会的責任があるのです」(村山)