「ミニ歌舞伎町」が一転、おしゃれエリアに
2020年4月、GREEN SPRINGSがオープン。以来、年間240万人が訪ねる立川の人気スポットに成長した。それまでの裏さびた「ミニ歌舞伎町」と言われていた駅北側がファミリーや夫婦、カップルが買い物や食事、散歩に立ち寄る「おしゃれなエリア」に大きく変わった。
GREEN SPRINGS自体も、20代から50代を中心に、さらに70代まで幅広い年齢層の人々で週末、平日とも終日賑わう(同社調べ)。多摩地区の利用客が67.0%と多いが、23区(11.7%)やその他の近郊(10.3%)からも訪れるという。
駅からサンサンロード経由で同施設まで、車の通行を心配せず歩くことができる歩行者専用道路になっているので、小さな子供を連れたファミリーやお年寄りも気軽に来られる。
先日、施設内で「この施設があるので、国立から立川に引っ越ししたんです」と20代の女性に話しかけられたという村山。その言葉を聞いて、街づくりの方向性は間違っていないと改めて確信したという。
村山が「評価を追っている」という「住みたい街ランキング」(SUUMO住みたい街ランキング2025 首都圏版)の最新版では、立川は前年度の22位から15位に順位を上げ、過去最高位を記録した。
一方、入居店舗数が40店と限られ、収益の成長率が懸念されていたが、村山は「どういう視点で見るかですよ。施設周辺の賑わいとともに、地価は非常に上昇している。不動産価値という観点では将来性もあり、成長が期待できる」と前向きな考えを示す。
「縦」の街づくりから「横」の街づくりへ
同施設を何度も訪れているという牧野は、立川を例に取り、これからの土地の価値は地域の価値で決まるようになると指摘し、その意味でも、立川は、将来の街づくりの在り方を示すモデルタウンになるのではないかと話す。
「駅前に人が集まる施設を建てる開発は、商店街のように横に広がっていた街を壊してタワーマンションを建て、そこに店を入れる。人は駅前にしか集まらず、駅から5分以上離れると、閑散として住宅しかない。ビル内では人はエレベーターで垂直に必要な場所へ移動するだけなので、人と人が有機的につながることもない。こういう『縦』の街づくりは、ウェルビーイングとはいえないわけです。
ところが、GREEN SPRINGSの開発では、街に奥行き、『横の空間』が生まれている。駅からサンサンロードを歩いていると、どんなものに出合えるかワクワクしながら散策できる。GREEN SPRINGSや昭和記念公園があって、さらに奥まで行くと、IKEAやららぽーとがある。
街を歩くことの効用を追求した、奥行きのある『横』の街づくりをしている。それがGREEN SPRINGSの魅力であり、将来の街づくりの在り方だと思うのです」