変革を5段階に分けその都度対処しよう

部下が変革を支持するように持っていく第一歩は、次に挙げる変革の5段階とそれぞれの段階が概してかきたてる感情を理解することだと、ボストン・コンサルティング・グループの元シニア・パートナーで、『チェンジモンスター―なぜ改革は挫折してしまうのか』 (2002)の著者としても知られるジーニー・ダニエル・ダックは言う。(1)停滞段階 売り上げの減少、株価の下落、顧客の離反、人材が集まりにくいなど不振の兆候があらわれる。組織の一部の人々が、現状のままではいけないと気づいて変革を唱えはじめる。他の人は現実を否認し、順調だと言い張って、そうではないとする人に激しく噛みつくのである。(2)準備段階 リーダーが変革の実施を決定し、発表する。マネジャーや一般社員の感情は、恐怖(「私は会社に残れるだろうか」)から安堵(「ああよかった。誰かが何かしてくれるらしい」)や意気込んだ気持ち(「さあ前進しよう」)までと幅広い。(3)実施段階 リーダーが新しい人事を発表したり、新しい指揮命令系統を定めたり、新しいプロセスを義務づけたりする。社員は、脅威や恐怖や落ち着かない気持ちに加えて、混乱、脱力感、腹立たしさ、適応についての不安、高揚感などを感じるかもしれない。新しい体制を築くために現状と格闘しているので、同時に2つの世界に生きているような感覚を持つものもいる。(4)確定段階 一部変化したようだが、変革はまだ根づいてはいない。新上司の下で新しいルールや新しいプロセスに従って仕事をするのだから、社員は混乱している。彼らはミスをおかし、そのために変革プロセスのペースが落ちることもある。変革に反対する人々は「言わんこっちゃない。うまくいくはずがないんだ」と得意げに語る。この段階が最も頓挫しやすい。(5)結実段階 理想的にいけば、これまでの努力が形ある結果を生みはじめる。株価の上昇もしくは売り上げの増大、効率の向上やコストの低下、有望な新製品の誕生、顧客の増加などだ。社員が抱く感情は、自信、楽天的な気持ち、強い意欲などだ。だが、注意する必要がある。結果についての満足感がこのままでよいという安心感に変わる恐れがあり、将来の変革の妨げになることがあるからだ。