有象無象のビジネスが乱立する時代、新製品に消費者を引きつけるのは容易なことではない。合理的に潜在的な市場ニーズをつかむ方法を伝授する。
次々に生まれる競合他社の商品とどう戦っていくか
今日、消費者を夢中にさせて利益を生み出す新しい製品をつくり出すことは容易ではない。提供されるサービスや提供業者やチャネルが無数にあるため、消費者の関心をとらえる競争は熾烈の一途を辿っている。
たとえば、今、映画を見たいと思う人にどれだけの選択肢があるか考えてみるといい。その人は映画館に行くこともできるし、Netflixのようなオンライン・レンタルサービスを通じてDVDを借りることもできる。また、ケーブルテレビ事業者からオンデマンドでビデオを借りることもできるし、TiVoに録画したテレビ映画を見ることもできる。さらに、アップルのiTunesやアマゾンなど、多くのウェブサイトから映画をダウンロードすることもできる。
魅力的な新製品開発に携わるマネジャーは、勝ち続けるために、次のことを実行すべきだ。
●次の成功するサービスをより確実に見きわめる
●競合するアイデアや投資案件に迅速かつ効果的な優先順位を
●顧客の心をつかむバリュー・プロポジション(顧客にとってどのような価値があるかという主張)を構築する
●選択した戦略をより迅速に実行する
世界各地の企業にコンサルティングを行うなかで、成功するコンセプトをマネジャーがより効率的に構築し、製品化するための4つの方法をみいだした。
(1)その「すごい技術」本当に顧客に必要か
技術者は、ほとんどの企業で新コンセプトの創出に強い影響力を持っている。だが、技術を優先させると、顧客のニーズより先にいきすぎたサービスや使い勝手の悪い、もしくはコストがかかりすぎるサービスをつくり出す恐れがある。ポータブルMP3プレーヤー、NOMADのような失敗がよい例だ。NOMADは、アップルのiPodが市場を奪い、成長していくのをただ眺めるしかなかった。
新商品は顧客のニーズによって導かれなくてはいけない。顧客の満たされていないニーズ、そしておそらくは明確に把握されていないニーズを見つける手法はいくつかある。たとえば、一般ユーザーがこの先何をしたがるかを照らし出せるオンライン・フォーラムや、海外市場における最先端の消費活動の分析、関連分野の製品投資の分析など、多方面からの知見を総合することによって、マネジャーは成功確率の高いバリュー・プロポジションや製品をより正確に予測できるのだ。
われわれは、あるデジタル通信メディア企業が国際オンラインサービスを構築する手助けをしたことがある。現地の消費行動を分析したところ、新興市場の消費者の多くがアメリカの消費者よりも、デジタルメディア通信サービスを頻繁に利用していることが明らかになった。また、アジアのある国では、コミュニティ活動が利用のほとんどを占めていたが、同じアジアの別の国では、教育・情報関係の利用がトップだった。これらの調査によって、この会社は個々の新市場の特性に合わせたサービスを構築できた。
(2)直感ではなく、論理的な基準でふるいにかけているか
新商品を、初期段階でふるいにかける努力を怠れば、開発の焦点が定まらず、製品化の遅れにつながってしまう。短期、長期双方の戦略目標や財務目標を反映した基準で優先順位を決めたほうが効果的だ。どのくらいの新規顧客を獲得でき、それに対し既存顧客の維持にどの程度影響があるか、どの程度の市場シェアを獲得できるか。また、一人当たりの平均売り上げはどの程度か、製品化までにどのくらいの時間がかかるか、成功の見込みはどの程度で、どのくらいの資源を投入する必要があるか、といったことが基準になる。
明確なビジネスの基準を用いることで、意思決定がより迅速になり、しかもすべての関係者にとってより透明なものになる。さらに、結果に対してより大きな自信を持つことができ、潜在力の高い少数のサービスに的を絞って取り組むことができる。