(3)機能だけでなく、儲かるしくみを構築
ほとんどの組織は商品の機能や特性の開発に膨大な時間を投じるが、商品を取り巻くビジネスモデルの構築にはその数分の一の時間しか使わない。だが、新商品が継続的に価値を生み出し、利益を実現するためには、往々にして新しいビジネスモデルが必要だ。
イギリスに本社を置くBスカイBは、これを見事にやってのけた企業の一つである。同社は事業開始時に会員制テレビモデルを採用した。20代から40代の男性にターゲットを絞り、多くの有名スポーツ・イベントの独占放映権を獲得。結果、かなりの数の視聴者に、それらのスポーツ・イベントを見るためには割増料金を払ってもよいと思わせることに成功した。
BスカイBはこの当初のビジネスモデルにイノベーションを加え続けてきた。『ロスト』『24』などの人気ドラマシリーズを視聴する権利を会員だけに提供、自社サービスの魅力をより幅広い顧客層に広め、視聴者を引きつけた。また、人気スポーツを軸に構成された多様なパッケージと双方向のサービスを通じて、会員により多くの選択肢を与えた。さらに、新たな収入源を加えるためにブロードバンドのインターネットサービスや電話サービスを開始した。
サービスにまつわるビジネスモデルを適切なものにすることで、BスカイBは高価格を継続し、より高価値のサービスの浸透度を高め、競争が激しくなるばかりのイギリス市場における自社の戦略的地位を守ることに成功している。
(4)新コンセプトを分析ツールできちんとテストする
今日では、投資する前に新商品をテストし、データに基づく製品設計を行うために高度な分析ツールを利用することができる。ビデオやアニメーションは新しいサービス・コンセプトの主な機能や利点をわかりやすく示すことができるし、競争環境のシミュレーションモデルはどの特性が実際に需要に影響を及ぼすか、競合他社の対応が市場にどのように作用する可能性があるかを明らかにできる。
われわれがコンサルティングを行ったアメリカのあるメディアは、次の3つの目標を念頭に、これらのツールを使用した。(1)消費者がどの新サービスをありがたがるかを素早く判定する(2)製品のどの機能や特性を優先させるべきかを明確にする(3)オファー戦略を練り上げる
われわれは、さまざまな事業者の料金を消費者がネット上で比べて選択できるシステムを構築した。これによって消費者が最も重視する特性、すなわちセキュリティ、写真管理機能、音楽やエンターテインメントといった特性を満たすためにはどのコンセプトを重視すべきかをはっきり特定することができた。
消費者の購買行動についての調査結果に基づき、この企業はセキュリティと写真サービスへの投資を倍増させ、ほかのサービスの開発活動を縮小した。その結果、製品化までの時間を短縮でき、オンライン・セキュリティ分野で主導的な地位を獲得することができた。
新しいコンセプトをつくり出すために消費者や競合他社や市場のデータを徹底的に分析する「アウトサイド・イン」は、潜在力の高い製品コンセプトを特定するのに大いに役に立つ。明確に定義された基準によって、アイデアをふるいにかけることは、的を絞った投資を可能にする。さらに、高度な分析で潜在力の高いコンセプトをテストすることは、マネジャーがより迅速で賢明な選択をする助けになる。これらすべてが製品化までの時間を短縮し、成功確率を高める働きをするのである。