3月18日、トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談を行った。両首脳はウクライナ戦争の部分的な戦闘中止案で折り合ったが、戦闘の全面中止は実現できなかった。米メディアはプーチン氏に大きく譲歩したトランプ政権に冷たい視線を送っている――。
2017年1月28日にワシントンで電話するドナルド・トランプ大統領(左)と、2023年12月27日にモスクワで電話するロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)。
写真=AFP/時事通信フォト
2017年1月28日にワシントンで電話するドナルド・トランプ大統領(左)と、2023年12月27日にモスクワで電話するロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)。

ホワイトハウスは「平和への第一歩」と成果を強調

アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領は3月18日午前10時(日本時間18日午後11時)から、2時間半に及ぶ電話会談を行い、ウクライナ戦争でエネルギー施設への攻撃を相互に停止することで合意した。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、ウクライナ側もロシアのエネルギー施設への攻撃を行わないことが条件となっている。対象となるのは発電所や変電所、送電網、石油・ガス関連設備で、ウクライナ側が同意すれば、こうした施設へのミサイルやドローン攻撃を双方が見合わせることとなる。

会談でプーチン氏はさらに、重傷を負った23人のウクライナ兵を解放し、今月末に双方から175人ずつの捕虜交換を行う意向も示した。

米ホワイトハウス報道官はこの合意を、「平和への第一歩」であると強調。永続的な和平の成立への期待を示した。トランプ氏も自身のSNSで、会談は「非常に実りある建設的な内容だった」と振り返っている。

会談の成果は欧州でも報じられた。BBCはホワイトハウスの声明を取り上げ、両首脳が「この紛争は永続的な平和によって終わらせるべきだ」との認識で一致したと報じている。

トランプが掲げた「攻撃の全面停止」から大きく後退

ただし、今回の部分合意は平和への道筋を一定程度付けた一方、トランプ政権が先週打ち出した30日間の全面停戦の実現には至らなかった。プーチン氏は全面停戦に対して表向きは賛同の意を示しながらも、実際には部分合意にとどめる道を選んだ形だ。

ニューヨーク・タイムズ紙は、エネルギー施設への攻撃停止の合意について、ウクライナ戦争勃発から3年で初めて双方が合意した攻撃中断として評価する一方、前述のようにトランプ政権の想定した成果には到底届いていないとの厳しい見方を示している。

同紙の報道によれば、ホワイトハウス内の一部高官は、プーチン氏が交渉の時間稼ぎを図っていると見ているという。高官によると、プーチン氏の狙いは二つある。和平に取り組んでいる姿勢を演出するための最小限の譲歩と、時間を稼ぎ戦場での優位性を確保することだ。

BBCも会談の結果について、トランプ政権の当初案から後退した形になったと報じている。米代表団は先週、サウジアラビアのジッダでウクライナ側と協議し、陸海空全域での「即時」30日間停戦案にキーウの同意を取り付けていた。