トランプ氏はウクライナの窮地を指摘し、プーチン氏に寄り添ったとも取れる発言をしている。3月17日、クルスク地域でロシア軍がウクライナ軍を「包囲した」と述べ、ロシア側の主張と同じ見解を示した。ゼレンスキー氏は反論している。
いずれにせよ、戦線での不利な状況は、交渉の場でもウクライナを苦しい立場に追い込んでいる。こうした厳しい現実から、ウクライナとしても限定的な停戦合意を模索せざるを得ない状況だ。
もっともエコノミスト誌は、ウクライナの情報筋が部分停戦案に不満を示していると伝えている。「我々がロシアの石油精製所を攻撃していることに対し、彼らは我々の行動を制限するよう求めてくる。その一方で彼らは、地上での攻勢を続けている」と述べ、エネルギー施設への相互の攻撃停止はロシア側に有利に働くと訴えた。
エネルギー施設の確保はウクライナに吉報
それでもウクライナにとって、自国のエネルギー施設への攻撃停止は朗報となり得る。
ロシア軍は2022年の侵攻開始以来、ウクライナの電力網への攻撃を重ね、全土のインフラに甚大な被害をもたらしてきた。ニューヨーク・タイムズ紙が報じるように、ロシアはドローンとミサイルを駆使してウクライナの電力システムを組織的に破壊。厳冬期には暖房や電気の不足から市民生活が脅かされ、人道的な危機に発展している。
一方、エコノミスト誌は、この合意がロシア側にも大きな利点をもたらすと指摘する。最近ウクライナ軍はロシア本土の石油・ガス施設への攻撃を活発化させており、これがプーチン政権の主たる収入源に損害を与えていた。先週、ウクライナは射程1000キロの改良型ネプチューン巡航ミサイルを実戦投入。最前線から約480キロ離れたトゥアプセの石油精製所を破壊したと報じられている。
エコノミスト誌によれば、この新型ミサイルの出現はロシアにとって無視できない脅威となっている。ウクライナは元々対艦用だったネプチューン・ミサイルを陸上目標攻撃用に改良し、攻撃能力を大幅に向上させた。これによりロシア領内奥深くの石油施設や燃料貯蔵庫への攻撃が可能となり、状況は大きく変わった。ロシアの戦争継続能力そのものを揺るがす手段を手に入れたとする分析もある。
タイム誌は、エネルギー関連施設は両国にとって戦略上極めて重要な資産だと指摘する。部分的合意に含まれるであろう重要な施設として、ザポリージャ原子力発電所がある。ウクライナ最大の原発であり、開戦前はウクライナの電力供給の約4分の1を担っていた。
2022年にロシア軍の管理下に入って以降、国連の国際原子力機関(IAEA)は安全面での懸念を繰り返し表明してきた。トランプ陣営とロシア当局者は今回の会談で、この原発の今後についても話し合いを持ったとされる。
