限定停戦から全面和平への道のりは長い
会談はロシアによるウクライナ侵攻を止めるうえでの一歩を踏み出したものの、前途多難だ。
エネルギー施設への攻撃中止に関する今回の部分停戦案は、すでに3年間続くウクライナ紛争で初めて双方が停戦に合意する可能性がある点で、ある程度大きな意味を持つ。だが、完全な戦闘終結への道のりは遠い。
プーチン氏は全面的な戦闘停止の条件として欧米諸国による軍事・情報面での支援中断を求めているが、ウクライナおよび欧州の同盟諸国からすれば、こうした要求は到底受け入れ難い。
1994年のブダペスト合意でウクライナは核兵器を放棄し、見返りとしてロシアやアメリカなどから領土の保証を約束された。だが、結果としてウクライナは核を失ったに過ぎず、2022年2月にロシアから再びの侵攻を受けている。

そのためゼレンスキー氏としては、もはやプーチン氏の約束は信頼できない。今回の停戦案に関しても、西側からの武器・情報の供与を絶たれるのみに終わり、いずれまた侵攻を受けるとの読みが働くだろう。
トランプ陣営はこの動きを「平和実現に向けた第一歩」と評価しているが、米国内では「ウクライナに厳しく、プーチンに甘すぎる」という批判も出ている。エネルギーインフラ攻撃停止が真の和平交渉への最初の一歩となるか、それともロシアに有利な単なる時間稼ぎに終わるのか。4年目に突入したウクライナの悲劇を止めるうえで、今後の交渉の行く末が注目される。