毎日新聞だけが東芝不正会計を1面掲載
東芝の不正会計問題は、まだ終わっていない。この3月、証券取引等監視委員会が、不正会計の責任を取って辞任した田中久雄前社長から、過去に行われた利益水増しの会計処理について、任意で事情聴取している。監視委は今後、ともに辞任した佐々木則夫副会長、西田厚聰相談役からも金融商品取引法違反を視野に入れながら事情を聴き、名門企業の闇にメスを入れる。
この本は、2015年5月の発覚から今年1月まで、毎日新聞のビジネス情報中心のニュースサイト「経済プレミア」に連載された「東芝問題レポート」がもとになっている。同サイトの今沢真編集長はいつものように自宅近くの喫茶店で、15年5月9日付の朝刊各紙に目を通していた。そのとき、毎日だけが東芝の「不適切会計」を1面に掲載し、他紙の扱いが小さいことに違和感を抱いたという。それがきっかけで、翌6月から連載をスタートさせた。
そもそも、ずっと優良企業とされてきた東芝が、なぜ会計の不正処理に手を染めなければならなかったのか。きっかけのひとつは、08年秋のリーマンショックである。世界を襲った経済恐慌の影響で、半導体市況が急激に悪化し、東芝の業績も一気に落ち込んだ。そして、その痛手からの立ち直りを図ろうとした矢先、11年に東日本大震災が発生。直後の津波は、福島第一原発を直撃し、国内の原発は運転停止、海外での新設需要も冷え込んだ。
その結果が、本来なら5月に行うべき決算発表の延期と配当見送りだった。それだけでなく、毎日新聞の記事は「不適切な会計処理」を明記しており、週明けの東京株式市場では、東芝株に売りが集中する。東芝は急遽、過去3年間の累計で、営業利益を500億円下方修正すると発表。しかし、とてもそんな金額では収まらず、東芝はさらに、有価証券報告書を修正。利益の水増しは2270億円に達していたのである。