創造的破壊が経済の発展をもたらす

「イノベーションを起こす企業家の創造的破壊が、経済発展の原動力になる」

およそ100年前、1912年にオーストリアの気鋭の経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターが、弱冠29歳で「経済発展の理論」を著した。この理論は、20世紀最大の経営学者ピーター・ドラッカーの手で具体化され、スティーブ・ジョブズなど強烈な個性を持つ企業家によって体現された。

『なぜ、今シュンペーターなのか』秋元征紘著 クロスメディア・パブリッシング

高度成長期の日本は、いわば静態的な資本主義体制下で経済成長を遂げた。西側陣営の盟主である米国の後押しで、より有利な条件を享受できた側面も見逃せない。しかし、89年のベルリンの壁崩壊を契機とした東西陣営の一体化によって、日本はあっという間にグローバル経済の波に飲み込まれた。この波はバブル崩壊と同時に押し寄せ、新たに訪れた動態的な経済環境への対応ができないまま20年強が経過した。

著者は、10年間国内大手企業に勤務し、外資系企業で20年強トップマネジメントとして経営に当たった実績をもとに、現在起業家向け支援、研修などの活動を行っている。そのベースとなっているのが大学時代に出会ったシュンペーターの経済理論であり、この理論こそいま現在の日本で重視されるべきだと力説する。

カール・マルクスが死去した1883年、同じヨーロッパの地にシュンペーター、ジョン・メイナード・ケインズという2人の経済学界の巨人が誕生した。この2人は終生ライバル関係を続けたが、その知名度となると圧倒的にケインズに軍配が上がるだろう。