「チャレンジ」と呼ぶ過剰な利益の積み上げ

ベテラン経済記者の著者は、連載のなかで、サイト編集部のスタッフとともに、東芝に不正会計を強いたものの正体を浮き彫りにしていく。そこで垣間見えてきたのは、西田氏と佐々木氏の経営戦略のミスにほかならない。西田氏は、05年の社長就任後に半導体と原発に経営資源を集中させた。その一方で、東芝セラミックスや東芝EMIなどを売却。第3世代の光ディスクであるHDDVD事業からも撤退した。

佐々木氏は、西田社長のもと06年に、アメリカの原発メーカー・ウェスチングハウスの買収に成功。しかし、前述のリーマンショックと東日本大震災、この2つの出来事によって、西田時代の“選択と集中”が裏目に出てしまう。加えて、ウェスチングハウスには巨額損失隠ぺいの事実も判明。結果的には、高すぎる買い物だったことも東芝の足を引っ張った。

そのため、東芝のトップマネジメントは「チャレンジ」と称する過剰な利益上積みに走る。それはほとんど、各事業部門への強要といってよく、達成できなければ、数字を操作するしかない。蓋を開けてみれば、16年3月期の最終赤字は7100億円の見通しだ。おそらく、こうした隠ぺい体質は東芝に限ったものではないと思った方がいいだろう。その意味で、この一冊は、多くの日本企業が他山の石とすべき本だ。

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