「営業は苦手」「未経験じゃ無理」。そう思っている人は少なくないだろう。そんなマイナス思考を吹き飛ばす、スゴ腕営業のテクニックを見よ。

私がソニー生命4000人の営業マンのトップ(2012年短期コンテスト件数部門にて)に立てるとは、誰が予想したでしょう。見かけはただのオジさんだし、弁舌巧みどころかむしろ口下手。44歳でこの業界に転職するまでは建設会社の現場監督をしており、営業などまったくしたことがなかったのですから。最初のうちは契約がとれないどころか、面談の約束さえしてもらえませんでした。

何がいけなかったのか、今ならわかります。新人の頃の私は、指導してくれる先輩の模倣をしていました。しかし44歳にもなると、話し方や人との接し方において、自分のスタイルというものができている。それを無理に抑えて先輩のようにしゃべっても、何か違和感がある。だから伝わらないのだとわかってきたのです。それよりは訥々とでもいいから、自分の言葉で話すほうがいい。このことに気づくまで、2、3年はかかりました。

もう一つわかったことがあります。お客様に喜んで契約していただくには、お客様の事前の期待値をほんのちょっとだけ上回ればいいということです。私はこれを「感動」と呼んでいます。期待と実感がイコールになれば、お客様は「満足」します。期待を実感が下回れば「不満」になります。ところが実感が期待を少しでも超えれば、お客様は「感動」し、契約してくださるのです。何も特別なことをして、期待を大きく上回る必要はありません。私たちはお客様と長いおつきあいをするのですから、無理をしてもどうせ続かなくなります。

ソニー生命 山本正明氏「お客様の期待値を実感が“ちょっとだけ”上回ると感動が生まれます」

お客様の期待値をちょっぴり上回るには、当然のことながらお客様が何を望んでいるかを知る必要があります。ところがこれがわからない。ですから私は面談後に、今日の感想をアンケートに書いていただくようにしています。これがお客様の求めているものを知る手がかりになる。その人が求めているのは説明のわかりやすさなのか、親身になってくれることなのか、熱心さなのか。あるいは自分の趣味や仕事に役立つ情報を持ってきてくれることなのか。それを探すことこそ、実は私の仕事だと思っています。

期待を上回るためにするのは、何も難しいことばかりではありません。笑顔の回数を多くすることもそうですし、白いポケットチーフをすれば少し余計に清潔そうに見えます。自分が海外旅行の経験が豊富なら、旅行好きなお客様に体験談を話してもいいでしょう。そういった期待値をちょっとだけ超えるような努力を毎回積み重ねることによって、私はトップ営業マンであり続けることができるのだと思っています。

ソニー生命 山本正明
1959年生まれ。中堅ゼネコンの現場監督から、44歳でソニー生命の営業マンへと転職。自分の営業スタイルを確立した後、入社からわずか10年で連続挙績460週を達成する。著書に『奇跡の営業』。
(長山清子=構成 澁谷高晴=撮影)
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