下手な営業で逆に収入が減ってしまった

パートナーのがん闘病をサポートしていると、仕事に支障をきたすことがあります。また、精神的にこちらも苦しくなってくることはめずらしくありません。サポートの度合いが大きくなるほど、この傾向は強くなる、といってもいいでしょう。

連載「ドキュメント 妻ががんになったら」が書籍化されました!『娘はまだ6歳、妻が乳がんになった』(プレジデント社刊)

ただ、会社に勤めている人の場合、仕事に支障をきたすことが増えれば、仕事で結果を出すことが難しくなるだけでなく、職場の人の対応も冷たくなるかもしれません。これらのことから考えると、職場の人には、「パートナーががんになったこと」「できる限り闘病のサポートをしたいこと」を伝えておいたほうがいいでしょう。

ある程度でも、職場の人からの理解が得られれば、パートナーの体調が悪かったり、そばにいてあげたほうがよかったりするとき、有給を取ったり、定時で帰宅したりしやすくなるかと思います。このように少しでも時間の調整がつけやすくなれば、精神的にかなりラクになるかと思います。

私の場合、会社に属していないため、妻ががんになったことは、取引先の担当者に伝えましたが、闘病のサポートのことについては、ほとんど話しませんでした。自宅で仕事をしているため、不安を覚えながらも、なんとか時間をつくってサポートすることができるだろう、と思ったのです。

ただ、金銭的に苦しくなってきたとき、とにかく入金が早く、打ち合わせや取材が1、2回ですむ短期仕事を回してくれるよう、必死になって営業をしました。これならお金だけでなく、サポートする時間もなんとか確保できる、と思ったのです。ところが、そのことが裏目に出たこともありました。

それまで私は、主にゴーストライターなどの長期仕事をしていたため、大きな仕事はしたくなくなったのか、と思われることもあったのです。さらに、仕事を受けたくないから、短期仕事をしたがっている、と思われていたこともありました。これでは「やる気がない」と思われても仕方がありません。実際、下手な営業をしたために、余計に収入が減ってしまったのです。

妻の闘病のサポートをしっかりしたいことを伝えることで、状況は改善しましたが、そのままじっと仕事がくるのを待っていたらと思うと、ゾッとします。このようにきちんと伝えていないと、誤解されることもあるのです。また、相手からすれば、こちらの状況がわからないため、理解できないことも多々出てきます。ですから、パートナーをサポートしたいことも、きちんと伝えておいたほうがいいのです。

これは悲しいことではあるのですが、仕事でも、プライベートでも、「運気が落ちそうな人には近づかない」という人はいます。そんな人でも同情はしてくれるのですが、結果的には、徐々に距離をとられてしまいます。「がん=死の病」と思い込んでいるためか、「触らぬ神に祟りなし」というふうに思われているのでしょう。もちろん、こちらの被害妄想もいくらかあるでしょうが、そう感じてしまうことがあったのです。

これは極端なことですが、「がんは伝染する、と思っている人たちもいる」ということを知ったとき、「怒り心頭に発する」を通り越して、深い悲しみに襲われました。とんでもないことです。妻をサポートしている私でも、かなり傷つきました。このような人は正しい知識を得て、自分の考えを悔い改めてほしい、と切望せずにはいられませんでした。