人の心をつかむうえで必要なのは「話し方」だけではないし、「聞き方」だけでもない。大事なのは、心が通じ合う「受け答え」だ。
思いのままに人を動かす会話術
会話には自分の思いを相手に伝え、人を動かす力がある。一方で、自分の思惑を隠しながら人を動かす技もある。人間心理のメカニズムを利用することで、思いのままに人を動かすことも不可能ではないのだ。
本音を隠して互いの腹の内に渦巻く思惑を探り合うと言えば、男女の会話が挙げられる。意中の相手を食事に誘う、嫌な思いをさせずにさらりと断る、見知らぬ異性とひとときの会話を楽しむ……すべて大人の会話力を以ってすれば実現できる。
「例えば『前提暗示法』を使えば、その気のない女性とディナーを楽しむことができます。人は自分の選択であれば不本意な結果も受け入れるという心理を逆手にとって、最初から食事をしないという選択肢を潰してしまうのです」(心理学者・立正大学特任講師 内藤誼人さん)
逆に、誘ってきた相手を喜ばせつつ、食事には行かずに済むテクニックもある。
「それには『イエス・バット法』がいいでしょう。食事に誘われたら二つ返事で快諾します。でも次の瞬間、先約を思い出して行けないことにするのです。最初に示された反応が強く印象に残ることを利用した大人のお断りの仕方です」(内藤さん)
これらのテクニックは、もちろんビジネスの場面でも活用できる。「前提暗示法」で商談を成立させ、「イエス・バット法」でやっかいな仕事を遠ざけるなど楽勝。飛び込み営業で販売ルートを広げたり、バーターを持ち掛けて交渉を有利に導くなど。
ただし、付け焼き刃ではすぐに見破られる。試行錯誤と日々の訓練が必要だ。さっそく今日から、めざせ会話の達人!