今年の通常国会で可決された刑事司法改革関連法案の中に、「司法取引」の導入がある。司法取引は欧米で広く認められ、(1)自分の罪を認め、軽い求刑にしてもらう「自己負罪型」、(2)共犯者などの捜査に協力することで、公訴されないなどの見返りを得る「捜査・訴追協力型」に大別される。(1)は裁判にかかる時間とコストの節約、(2)は証拠集めが主な目的だ。海外では両方があることが多いが、日本で進められているのは捜査・訴追協力型のみ。2015年に起きた国際サッカー連盟(FIFA)汚職事件は、11年に元理事が脱税で摘発された際、FIFAの悪行を司法取引の材料に使ったことで発覚した。日本でもこうした事例が起こる可能性が出てくる。

巨額汚職発覚のきっかけは司法取引(辞任会見するFIFAのブラッター会長、2015年6月)。(AFLO=写真)

企業側にもメリットはある。弁護士の平尾覚氏は、「犯罪が発覚すると、欧米企業は経営判断として徹底的に捜査協力をして恩恵を受ける」と話す。犯罪で摘発され、内部調査でさらに他の役員が絡んでいるとわかった場合、その後どうなるかは今まで検察の腹次第だった。だが司法取引をすれば、企業側からもある程度コントロールできる。平尾氏は、いずれは自己負罪型も導入されるだろうと話す。そうなれば、仮に内部監査で役員が官僚に賄賂を送ったと判明した場合、当局に自己申告すれば刑が軽くなる、ということが起きる。

(AFLO=写真)
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