米国の雇用形態では、雇用主はいつでも社員を解雇でき、社員はいつでも転職できる。だが、こうした一方通行の労使関係を変える動きが登場した。シリコンバレーのIT企業の間で広まっている「アライアンス」という新しい雇用形態のことだ。アライアンスでは、雇用主と社員双方が「どのような価値を相手に望むか」を明示し、話し合ったうえで雇用契約を結んでいる。ポイントは、雇用主と社員の関係が、対等なパートナー関係であること。たとえば、雇用主が望む価値が「複数の重要案件(ミッション)をこなしてもらう」で、社員が望む価値が「起業家になる」だとしよう。この場合、雇用主はミッションごとに達成期間を設けて社員に頑張ってもらう。一方、社員は起業家になるために必要な部署を渡り歩かせてもらえる。
日本でも今後、アライアンスという雇用形態が広まるのか。リード・ホフマン氏の著書『ALLIANCE アライアンス』を監訳した東京糸井重里事務所CFOの篠田真貴子氏は、「アライアンスは企業と人の約束の積み重ね。日本では、新規事業立ち上げなどのミッションを期間内に完遂する約束を明確に定義できている事例が少ない」と指摘する。
(AFLO=写真)