パソコンを前にグズグズ、ダラダラ。ついつい寝坊、深酒……。そんなグズの思考回路を、脳科学者が解明。積年の悪弊を取り除くヒントは、自分の頭の中にあった!
必要な書類をどこに片づけたのか忘れてしまったり、会議中に「えーと、何だっけ、あれだよ、あれ」と会話の流れを止めてしまったり。ちょっとした記憶の欠如が仕事の効率を落としてしまうことがある。とくに加齢とともに物忘れがひどくなったと実感している人は多いはずだ。しかし、中野信子先生は、「年齢を重ねても、記憶力そのものが落ちるわけではない」と解説する。
「記憶の容量を箱になぞらえると、何歳になっても箱の大きさは変わりません。ただ、加齢とともに入り口のところが狭くなり、情報が記憶の箱に入りづらくなります。つまり年を取ると記憶を引き出せなくなるというより、最初から覚えないようになるのです」
なぜ、新たな情報を覚えなくなるのか。それは、脳が金食い虫だからだ。
「脳は酸素要求量が多く、栄養もたくさん使います。体としては、なるべく脳の働きを抑えて酸素や栄養などのリソースを節約したい。そこで年齢を重ねるにつれて節約モードになります。節約モードに入ると、たとえば何かを経験しても、『これは重要なことではない』と注意を向けなくなり、記憶しようとしなくなります」
ただ、記憶箱の入り口は大きくすることが可能だ。そのことを理解するには、まず3種類の記憶について説明しなければいけない。記憶には、「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶(非陳述性記憶)」がある。エピソード記憶は、あのときああいうことがあったという自分の体験にもとづく記憶のこと。意味記憶は円周率や年号のように意味で覚えた記憶、手続き記憶は自転車の乗り方のように理屈ではなく体で覚えた記憶を指す。