人気と強さに比例して、アンチの数も多い巨人。9月にセ・リーグ3連覇を達成。 (写真=時事通信フォト)

人間の脳の、扁桃体などの感情の回路の性質に基づく、とても面白い現象がある。

すなわち、「嫌い」は「好き」に近いということ。むしろ「無関心」のほうが、「好き」から一番遠い。これは、私たち自身の経験に照らしてみても、頷ける命題であろう。

昔から言われていることだが、「アンチ」は「好き」に近い。プロ野球で「アンチ巨人」の人は、実は巨人に興味がある。アンチと言いながら、ついつい、巨人戦を見てしまう。嫌いなはずの相手から目が離せないのだ。

ある人が「嫌い」だということは、つまり、それだけ関心があるということである。非難したくて仕方がない。つい、さまざまな人を相手に、その人の悪口を言ってしまう。気付いてみれば、かなりの心的エネルギーを、嫌いなはずの人に対して費やしている。

脳の仕組みから言えば、その「嫌いな人」が、嫌っている人の感情の回路にそれだけ強く刻印されているということであり、関心があるということである。それは、ほとんど、「好き」に近い。

もし、あなたが、会社や身の回りに、嫌いで仕方がない、どうしても悪口を言いたくなる人がいるとしたら、逆に、なぜそれほど関心を持つのか、自問したほうがよい。たとえば、次のような問いを、自分自身に投げかけてみてはいかがだろう?

その人の、どこが一体気になっているのだろうか?

その人が持っていて、自分が持っていないものはないか? 実は、その人の何かが、うらやましくて仕方がないのではないか?

嫉妬の感情は、混じっていないか? それを自分で認めたくないから、悪口で隠しているのではないか?

自分の中にもあって、嫌だなあと思っている何かが、その人にもあるのではないか?