孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 買収するために2兆円が必要になった

孫はボーダフォンの買収を決断した。そこで浮上したのが2兆円もの莫大な資金調達の問題である。当然2兆円もの資金は孫の手元にない。そこで選択。A案は、世界的にもオーソドックスになった買収先企業の株主に自社株を渡す方法。B案は、銀行の融資を受けて、現金で買収。
【A】株式交換で買収する【B】銀行団から融資を受ける
(正答率50%)
2006年3月17日、ボーダフォン・ジャパン社長W・モローと買収に合意。(写真=時事通信フォト)

世間をあっと驚かす、大規模な買収をしようとするとき、現金で買収するか、株式交換(新株発行)による買収にするか。

株式交換とは、簡単に言えば買収先企業の株主に自社の株式を渡すこと。この方法なら、高額な現金が必要なくなり企業買収もしやすくなります。日本も、そんな世界的なM&Aの手法が今後普及していく可能性がありますが、国内では現金による買収が一般的です。

さて、先ほども言いましたが、僕たちは、2006年にボーダフォン・ジャパンを現金2兆円で買収しました。この額は当時、日本経済史上では過去最大で、欧米を含めても過去2番目に大きい「歴史的な出来事」でした。

つまりそれは、いかにソフトバンクが無謀なリスクテーキングなことをしたかという証しでもあります。手元にキャッシュの2兆円があったわけではありません。それでもお金をかき集めて借り入れをして現金で買収する。欧米の経営者から見ても、ほとんど狂気の沙汰でしょう。しかも、ボーダフォン・ジャパンの利益はそれまでの数年間、完全な右肩下がりの状態だったのですから。「孫は法外に高い値でボーダフォンを買った」というのが一般的な評価でした。