モバイルが倒産しても生き残れる仕組み
ただひとつ言えるのは、その時期が大きな投資をするには絶好のタイミングだったということでした。100年前も、100年後も、あんなに金利の安いときはありません。おそらくソフトバンクはラッキーだった、と後世の人は言うでしょう。さらに言えば、ファイナンス的なストラクチャー(仕組み)としては、ソフトバンク本体は買収に伴う債務保証をしないような体制をとることができた。
ボーダフォン・ジャパンは、落ち目だったとはいえ、1500万人の顧客がいて実質的な営業キャッシュフローで年間約3000億円稼いでいました。だから、その携帯電話事業のキャッシュフローで銀行団は問題なく融資してくれる。
ソフトバンクは買収時に資本金2000億円を出していますが、ボーダフォン・ジャパンを直接的に買収したソフトバンクモバイルは、ソフトバンクとは別会社で、ソフトバンクモバイルが仮に倒産しても、ソフトバンク本体はその資本金2000億円以外は債務を負うことはありません。財務リスクを少なくする形で現金を用意することができたわけです。
一橋大院教授 GCAサヴィアン取締役 佐山展生氏が解説
投資ファンドでなく、事業会社がこの方法をとることは稀で、孫さんの独創性が発揮された方法である。今までの本業とはまったく違う事業に参入するとき、本体と分離する形で借り入れをしたほうが、リスクを回避できる。株式交換の買収では、新たな株式発行をともなうケースが多く、議決権の希薄化が起きるため、自社株を大量に保有する創業経営者は好んで使用しない。また買収先の旧経営陣にも引き続き発言権を与える。
●正解【B】――金利が安い時期に、リスクが低い仕組みで借りられた
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。