孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。

Q. 買収するために2兆円が必要になった

企業のもつ最大の資産は人材だ。企業買収では、それまでの企業文化に馴染んだ社員の扱いが課題となる。下手に融合を図れば、社員の離反を招く。だがそれまでのやり方を踏襲していれば、企業価値を向上させることはできない。どこかで融合を図る必要がある。A案は、穏やかな方法。B案は、有無をいわさぬ強硬策。
【A】尊重して徐々に統合【B】一気に融合させる
(正答率65%)
孫正義氏

買収した企業との統合プロセスは、端で見ているより難しいものです。買収には何千億円、何兆円という費用をかけている。その相手のマネジメントやルールを尊重するか。もしくは、一気にこちらのやり方を押し付けて融合を図るか。

ソフトバンクはそれまでに、ジフ・デービス、コムデックス、キングストン、日本テレコムなど、数多くの企業買収を経験していました。それらのケースで、僕はどう対処したかといえば、いずれも、買収先を尊重するというA案を採っていました。

なぜか。下手に融合を図れば、買収した会社の価値が一瞬で吹っ飛んでしまうかもしれないという恐れがあったからです。相手がこれまで培ってきたノウハウ、ルール、マネジメント、勤務スタイル……、そうしたものに敬意を払い受け入れていかなければ、社員は離反していなくなる。レストランでいえば、シェフがいなくなり、味が変わってしまうようなことは絶対に避けたかった。だから一般的には尊重すべきだと考えていました。

僕は、「激しい人間」というイメージをもたれていますが、案外、やさしいんですよ。やっぱり相手を尊重してあげなければいけないかな、と思ってしまう。できるだけ、ケンカもしたくないと思っています。