上位の2社を追い越す気概は全くなかった
そのため、まずは不退転の決意として、僕自身が直接、初日から社長になりました。そしてそれまでのボーダフォンのやり方をすべてゼロから考え直すという作業に取りかかりました。遠慮や妥協は一切なしです。
商品企画から技術企画、営業の末端にいたるまで、課長クラス以下の仕事にまで、僕が直接に現場に突入してやりました。ヤフーBBのときと同じです。このほか、ソフトバンクの歴史で僕が直接やったのは、創業当初のパソコンソフト卸売業と出版事業だけです。
ボーダフォンの社員に触れたときの印象は、ドコモやauに続く3位という地位に満足しきっている、ということでした。上位の2社に追いつき、追い越そうという気概は全く感じられなかった。利益が少し出ていれば、まあいいか、といった緩い空気が充満していたのです。番号ポータビリティー制度への危機感も乏しく、ビジネスマンがもつべき貪欲さや上昇志向が感じられませんでした。
言い換えれば、社員にはどこかスノッブな雰囲気がありました。しかし、ソフトバンクモバイルはあくまで販売会社です。売ってなんぼの地道なビジネスです。その意識づけをするのに僕たちは大変苦労しました。
とにかくボーダフォンの中にあった過去の習わしもマネジメントも一切尊重しない。いい子にはならない。仲良しクラブにはしない。経営に対する責任感に基づき、自分自身が「正しい」と思う判断以外はしない。そういった固い決意がありました。
それがあったから、今はボーダフォン時代からの社員もすっかりソフトバンクのスタイルに馴染み、一体感が生まれるようになりました。