阪急阪神百貨店などを展開するエイチ・ツー・オーリテイリング(以下、H2O)は、6月1日に中堅スーパーのイズミヤを完全子会社化して経営統合した。今回の大きな特徴は、買収対価の一部に自社株を活用したM&A(買収・合併)であることで、最近、同じような形でのM&Aが活発になっている。

具体的に経営統合に用いられたのは「株式交換」という方法で、イズミヤの普通株1株に対して、H2Oの0.63株が割り当てられる。H2Oは自社株の放出と新株の発行を組み合わせてイズミヤ株との交換を行うとされた。

経営統合を発表した今年1月31日の株価の終値はH2Oが843円なのに対してイズミヤは450円で、その比率は「1:0.53」。それに比べて、実際の株式交換の比率はイズミヤを0.1ポイントも高く評価していることになる。企業価値があるからM&Aを行うのであるが、具体的に交換の比率については、証券会社などの複数の算定機関に分析を依頼し、それを参考に決めるのが通常である。

今回のケースでは、SMBC日興証券とKPMG FASの2社がそれぞれ「市場株価法」と「DCF法」で評価を行っている。「市場株価法」は、文字どおり株価を用いて評価するもの。日興証券は、過去1カ月、3カ月、6カ月の平均株価に基づいて算定したという。

一方の「DCF法」は、ディスカウンテッド・キャッシュフロー法の略だ。両社の収益予測に基づいて、今後生み出すと見込まれるフリー・キャッシュフローを算出し、将来の事業活動の成果を評価に反映させていく。株価も将来の企業価値が織り込まれる性質があるので、市場株価法、DCF法とも、未来を見通すための評価法といっていいだろう。