ユニ・チャームが「自社株買い」を行った。自社株買いとは、いったん発行した自社の株式を買い戻すことで、買い戻した株式は「自己株式」「金庫株」と呼ばれる。
同社では、まず今年1月31日に自社株買いの計画を発表。取得するのは発行済み株式総数の1.16%に当たる上限240万株で、そのための取得金額として最大で110億円を見込んでいた。そして、2月1日から3月22日にかけて、206万4500株を約110億円で取得したのだ。
会計処理について整理しよう。仮に発行済みの株式が1億株で、そのうち100万株を、株価が5000円のときに買い戻したとすると、バランスシート(B/S)の資産は自社株買いの資金支出により50億円減少する。それと同時に、資本の部に自己株式として「マイナス50億円」を計上する。これで資産と負債がバランスする(図参照)。
次に自社株買いのメリットについてみていきたい。
同社では自社株買いを行う理由について、「株主への一層の利益還元と企業環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とするため」としている。確かに自社株買いは株主への利益還元として投資家から好感され、株価が上がることも多いが、それはなぜだろう。
たとえば予想純利益が180だった場合、流通している株数が100株なら1株当たりの予想純利益は1.8となる。しかし、自社株買いによって株数が90になると、1株当たり予想純利益は2に増える。つまり、株主にとっては配当の原資ともなる1株当たり純利益が計算上増えるため、自社株買いをする企業の株式は投資対象としての魅力が高まるというわけだ。
実際にユニ・チャームの株価はどうだったのだろう。自社株買いの計画を発表した1月31日の終値は4850円。そして、自社株買いが終わった3月22日の終値は5450円へ上昇している。株高の時期だったとはいえ、同じ期間に日経平均株価の上昇率が10.7%であったのに対して、同社の株価の上昇率はそれを上回る12.3%。市場が同社の自社株買いを好感していたことがわかる。