JA農協や農林水産省が「悪者」に仕立て上げられ、驚くほどたたかれている。これはどうしてなのか。現役農家のSITO.さんは「農業政策について、あまりにも誤解されている部分が大きい。農産物の安定した供給と価格の維持のためにも、ぜひ仕組みを知っておいてほしい」という――。
JAビル(東京都千代田区、2025年5月13日撮影)
写真=時事通信フォト
JAビル(東京都千代田区、2025年5月13日撮影)

主食である米の価格高騰への不満が爆発

一昨年から、農林水産省やJA(農協:農業協同組合)をひどく敵視する人が増えています。いまや根拠のない内容や事実誤認が含まれる言説であっても、両者を批判しさえすれば、多くの人の賛意を集めることができるほどです。

これはまず、米の価格があまりにも急激に高騰したからでしょう。米は日本人にとって主食であり、特別な食品です。その価格が大きく上がれば、家計にとって大打撃となるため、多くの人が不満を募らせるのは当然だと思います。

ただし、最近の米価上昇は、猛暑などによる不作、外食需要の回復といった短期的な要因により需要が供給を上回ってしまったことがきっかけでした。そのうえインフレや円安によって、米だけではなく食料品全般が値上がりしたためでもあります。それでも最も大きく価格高騰したのが米であること、また主食であることから、農水省やJAが批判の的になったのです。

もちろん、農水省もJAも完璧とは言えませんが、それほどおかしな政策や運営をしているかというと、決してそんなことはありません。なのに、どうしてこんな誤解が生じたのでしょうか。一つずつ例を挙げて解説していきます。

既に「減反政策」は完全廃止されている

まず、よく聞かれるのが「国が減反政策を行っているせいで米が不足している」という説です。しかし、そもそも今現在、減反政策は行われていません。

国が都道府県ごとに米の生産目標を決め、JAが農家へ米の作付面積である「反」を直接割り当てることで削減し、これに応じた農家に補助金を支給する「減反政策」は、1970年から2017年まで長く続けられました。

この減反政策は、食生活の多様化によって、米が大量に余ったために行われた政策です。なんとか米の需要を増やそうと盛んに「お米を食べようキャンペーン」が行われたのを覚えている人も多いでしょう。当時においては、米の過剰生産をなくすことで需給バランスをとり、価格を安定させるために必要で効果的な政策でした。しかし、一方で離農を促進したり、米農家の競争力を失わせたり、必要なときにすぐに米を増産することが難しい状況を招いたともいえます。

その後、2018年に減反政策は廃止され、現在「国が米を作るなと命じる制度」は存在しません。今は、国が予測した需要量を基に各都道府県で生産目標が策定され、各農家はその生産目標と各種補助・助成制度等を踏まえた上で生産量を決定しています。つまり、市場原理プラス各種制度によって、安定した生産量と価格を目指しているわけです。