シニア転職の難しさとは何か。中高年層を長年取材しているジャーナリストの若月澪子さんは「『自分を大きく見せる』より、『使える人に見られる』履歴を職務経歴書に書くほうが吉と出やすい」という――。

ビズリーチは「ハイスペ婚活サイト」

仕事探しは「婚活」と似ている。企業から見れば、人材探しだからだ。

ちまたにあふれる転職サイトは、マッチングアプリや結婚相談所にたとえられることも多い。求職者や結婚相手を探す人は、「求人サイト」や「婚活サイト」などのプラットフォームに集まり、そこから選び、選ばれていく。

そして就活でも婚活でも、年齢が上がるほど不利になる。

今、仕事探しの手段の一つに「ハイクラス転職サービス」というものがある。これは婚活市場でいうところの、医者や弁護士や高年収の男性のみが登録できる「ハイスペ婚活サービス」のようなものだ。

「ハイクラス転職サービス」のビズリーチやリクルートダイレクトスカウトなどは「年収500万円以上、マネジメント経験者」向けの転職サービスと言われている。登録には厳しい審査もあり、さらに審査をパスしても求職者は企業からの「スカウト」を待たなければならない。声がかからなければ、転職活動には進めない。

「ハイスペ転職」も年が若いほうが有利だ。50歳以上の中高年になると「市場価値」が徐々に低迷し、登録はできるものの「スカウトなど一件も来ない」という事態もある。

スマートフォンで仕事を探している男性の手元
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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「半沢直樹」が役職定年を迎えたら

「銀行を辞める55歳の頃にビズリーチに登録しましたが、スカウトはゼロでした」

こう話す大阪府在住のCさん(61歳)は、メガバンクに30年以上勤務した元銀行マン。気さくに取材に応じる今のCさんには、メガバンカー時代の面影はない。ラフな雰囲気の中高年男性である。

大手銀行の出身者でも、50歳を過ぎれば「ビズリーチでスカウト0(ゼロ)」はザラにある。しかしCさんは60歳を過ぎてから、スカウトが殺到するようになった。いったい何が起きたのだろうか。

Cさんは、かのドラマ『半沢直樹』と同じく「メガバンクのバブル入行組」。支店を回りつつ順調に銀行員の昇進コースを歩み、最後は年収1500万円の本部次長として、2000万円の退職一時金とともに銀行を「卒業」した。

「先輩たちは55歳になると役職定年を迎え、関連会社か一般企業にこぢんまりしたポストをあてがわれて卒業します。自分もそうなると知った時は、体が震えました」

Cさんには障害がある息子がおり、「70歳まではそれなりの年収で働きたい」と考えていた。だからこそ銀行に身を置きながら、ビズリーチの登録もしたのである。