※本稿は、今井照『自治体は何のためにあるのか』(岩波新書)の一部を再編集したものです。
国と市民でギャップのある“復興の実態”
東日本大震災での津波被災地では数多くの都市計画プランナーや建築家たちが、ボランティアベースやビジネスベースで活動する姿が見られました。国も「創造的復興」を旗印に、地形を変えるほど大規模な事業に手を付け始めます。市町村の対応は微妙に分かれます。被災から十数年を経過した現在の様相から、それぞれの市町村がどのように復興政策に対応したのかという違いが想像できます。
原発事故の直接的被災地には、現在でもまだ原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が出されたままです。一方、国は東京五輪誘致に向けた国際公約で福島復興を掲げます。そのために、こちらでも原風景をとどめないような「復興」事業が進められてきました。
こうして一部の地域を除き、復興過程における自治体、特に市町村の政策形成は市民に見えにくいものになってしまいました。被災した市民が拡散してしまったという物理的な要因もありますが、市民が計画を練り上げるというよりは、「上」からの計画が大量に降ってきて、それぞれの役所がその施行に追いまくられる構造になったのです。
除染事業のお金が電話掛けに使われる
震災や原発事故に対する生活再建過程におけるほんの一例ですが、原発事故に伴う除染事業について、次のようなことが福島県の伊達市で起きています。主なお金の流れは、図表1のとおりです。
国のお金が自治体を経由して、日本有数の大企業に流れていくようすがわかります。念のため先に書いておくと、この事例についても、市民感覚から首をかしげることが多々あり、契約の内容や手続きに疑問はありますが、今のところ、明示的に違法なことが行われた形跡は明らかにされていません。
この事業は除染対策事業交付金で賄われているので、除染事業に使われたと思ってしまいますが、実際には除染対象地域の住民に電話をかけ、必要に応じて面談して説明するというリスクコミュニケーション事業です。
本来、リスクコミュニケーションとは、関係者間の相互理解と信頼構築を形成しようとするものですが、厚生労働省の定義では、双方向ばかりではなく、広報や説明のように一方的なコミュニケーションを含めているようです。


