では、企業は取得した自社株をどうするのか。まず「売却」が考えられる。株価が上昇した際に売却すれば、取得額との差額は企業の純資産を増やす。営業活動(本業)などに関係しないため、損益計算書には記載されないが、B/S上の「その他資本剰余金」に回されて配当の原資となる。
また、売却で得られたその利益を設備投資に回して、さらなる利益を獲得する手段として生かすこともできる。再び資金を調達する手段ともなるのだ。
次に考えられるのが、M&A(買収・合併)での活用だ。M&Aによって親会社になる場合などに、統合先の株主に対して自社の株式を割り当てる必要が出てくる。その際に株式を新規発行することもある。しかし、自社株があれば、それを割り当てることができ、新規発行による株価の下落を避けられるメリットなどが生じる。
このように自社株の売却で資金調達したり、自社株をM&Aに活用したりすることなども、ユニ・チャームのいう「機動的な資本政策の遂行」に含まれていると考えられる。
さらに、自社株を「消却」するケースもある。この場合の会計処理として、自社株の簿価を「その他資本剰余金」から差し引くなどする。もっとも、自社株の売却による資金調達方法をあえて選ばないわけだから、ほかに有利な条件で借り入れができたり、当面は潤沢に資金があって資金調達の必要性が乏しいなどの状況が想像できる。
いずれにせよ自社株をどう生かすか、重要な経営判断に委ねられることは間違いない。
(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)