東京ディズニーリゾートに隣接する商業施設「イクスピアリ」。精巧な街並みはディズニー施設そのものだが、そこにミッキーの姿はなく、足を止める人も多くはない。なぜ舞浜駅前に、人が集まらない「空白地帯」が生まれたのか。街歩きライターの杉浦圭さんが現地を歩き、その理由をひも解く――。(後編/全2回)

イクスピアリにはミッキーがいない

東京ディズニーリゾート(TDR)を訪れたゲストがイクスピアリに足を踏み入れた際、最初に抱くのは言語化しにくい「違和感」ではないだろうか。

精巧に作られた建築デザインやテーマ性の強い街並みは、一見すると極めてディズニー的だ。しかし、そこにはディズニーを象徴するミッキーマウスやプリンセスたちの姿が一切ない。

ディズニーリゾートラインやディズニー映画の広告が並ぶイクスピアリの入口。一見すると「ディズニーの街」に見えるが、施設内にディズニーキャラクターの姿はない
筆者撮影
ディズニーリゾートラインやディズニー映画の広告が並ぶイクスピアリの入り口。一見すると「ディズニーの街」に見えるが、施設内にディズニーキャラクターの姿はない

TDRという広大な敷地の中にありながら、施設全体を牽引するメインキャラクターがいない。この「ディズニーのようでいて、ディズニーではない」という独特の空気感こそが、イクスピアリのアイデンティティーであり、同時に現在の「わかりにくさ」の根源にもなっている。

しかし、この空気感は偶然生まれたものではない。その裏には、かつて「舞浜リゾート」という独自の街づくりを死守しようとしたオリエンタルランド(OLC)と、自社ブランドの厳格な管理を求めた米国ディズニー社、両者のプライドが激しくぶつかり合った歴史があった。

なぜ、これほど作り込まれた街に、あえてミッキーを入れなかったのか。本稿では、現地でのルポとOLCの歩みをたどりながら、その理由をひも解いていく。